
この記事でわかること
✓ 全荷主が取り組むべき、荷待ち時間等の短縮と積載率向上の数値目標
✓ 特定荷主の判定基準と取扱貨物重量の算定ルール
✓ 特定荷主に課される法的義務(中長期計画、CLOの選任、定期報告書)
✓ 行政による監督と罰則・社名公表のリスク
はじめに
2026年1月、TMI総合法律事務所 国土交通省デジタルアドバイザー 弁護士 粟井勇貴様をお招きし、2026年4月に本格施行を迎えた「物流効率化法」をテーマとしたセミナーを開催いたしました。
当記事では、TMI総合法律事務所 弁護士 粟井様よりご解説いただいた、セミナー第1部「荷主向け 物流効率化法の要点と実務対応」の主要なポイントを抜粋してご紹介いたします。
第1部:「荷主向け 物流効率化法の要点と実務対応」
1. 「物流効率化法」の概要と対応フロー
2026年4月に「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」が本格施行されました。
本制度の大きな転換点は、これまで努力義務であった事項が一定規模以上の荷主に対して「法的義務」へと格上げされる点です。
実務において「いつまでに、何を、どの程度の頻度で」対応すべきなのか、その全体像を解説します。
①全荷主・特定荷主が負うべき役割の区分
物流効率化法では、荷主が果たすべき役割は、全ての荷主を対象とした「努力義務」と特定荷主に課される「法的義務」の2つの枠組みに大別されます。
●全荷主が対象(努力義務):2024年4月に施行
・荷待ち・荷役等時間の短縮
・積載効率の向上
●特定荷主が対象(法的義務):2026年4月より施行
・特定荷主の指定に係る届出:2026年5月末
・物流統括管理者(CLO)の選任:2026年10月末(中長期計画の提出まで)
・中長期計画の提出:2026年10月末(2027年以降は7月末)
・定期報告の提出:2027年7月末
*各事項で対応時期が異なるため、注意が必要です。
②対応フロー:現状把握から特定荷主の義務遂行まで
物流効率化法への対応は、全ての荷主が取り組むべき事項から、取扱貨物重量に応じた特定荷主としての義務へと段階的に進みます。
実務における具体的なステップは以下の通りです。
<対応フロー>
1. 努力義務への対応:全荷主対応
・自社が物流効率化法上のどの荷主に該当するのかを把握します。
・各施設・運行における判断基準の取り組み状況を整理します。
2.取扱貨物重量の把握:全荷主対応
・自社が特定荷主に該当するのか判断するため、基準となる年間の取扱貨物重量が「9万トン」を超えているかを確認します。
(以下、特定荷主に該当する場合のみ)
3. 特定事業者の指定の届出
・前年度の取扱貨物重量が「9万トン」を超えた場合、荷主事業所管省庁等へ届出を行います。
・期限:基準超過の翌年度5月末まで(初回のみ)
4. 物流統括管理者(CLO)の選任
・特定事業者の指定後、速やかに物流統括管理者を選任し、届出を行います。
5. 中長期計画の策定
・運送委託・貨物受渡しの全体像と改善の優先順位や方法を検討します。
・取引先との協議や施設整備等の長期的な対応も含めた計画書を提出します。
・期限:2026年度は10月末まで(計画内容に変更がなければ、5年ごと7月末まで)
6. 定期報告書の提出
・判断基準の取り組み状況や荷待ち時間等の実態を毎年度報告します。
・期限:毎年度7月末まで(2027年7月より開始)
––––––––––
7. 評価・公表:全荷主が対象
・提出された報告内容を評価し、優良事業者等の公表が行われます。(2027年度以降)
2. 物流効率化のために取り組むべき措置(努力義務)
物流効率化法では、荷主だけでなく、フランチャイズチェーン本部、トラック事業者、倉庫業者、倉庫業者以外の貨物自動車関連事業者など、物流に関わる事業者に対しさまざまな努力義務が課されています。
本章では、その中でも特に荷主が意識すべき目標や具体的な取り組み等について解説します。
①達成すべき数値目標
「貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化の推進に関する基本的な方針」に基づき、以下の具体的な目標が定められています。
1. 運転者の荷待ち時間等(荷待ち時間+荷役時間)の短縮
<全体目標>
令和10年度までに、全国の貨物自動車による運送のうち5割の運行で荷待ち時間等を1時間短縮し、運転手1人当たり年間125時間の短縮を目指す。
<1回あたりの受渡し基準>
原則として「1時間以内」を目標とし、業界の特性その他の事情によりやむを得ない場合を除き「2時間を超えない」よう短縮を図る。
2. 運転手1人当たりの運行ごとの貨物重量の増加
<全体目標>
令和10年度までに、全国の貨物自動車による輸送のうち5割の車両で積載率50%を目指し、全体として車両当たり44%の積載効率を目指す。
②物流効率化法に基づく努力義務の具体的内容
物流効率化法に基づき、具体的にどのような対策を講じるべきかについては、大きく3つの柱が示されています。
<推奨される「3つの効率化施策」>
1. 積載効率の向上等
・リードタイムの延長
・発送量・納入量の適正化
・配車システムの導入による配車・運行計画の最適化
2. 荷待ち時間の短縮
・トラック予約受付システム(バース予約システム)の導入と運用改善
3. 荷役等時間の短縮
・パレットの利用推進(標準化)
・検品の効率化(AI判定やマニュアル共通化)等
*これらはあくまで具体例として示されているものです。必ずしもこれらに則る義務はありませんが、こうした施策を参考に自社の状況に合わせた効率化を目指していただきたいというものです。
<実務上の注意すべきポイント:「荷主等の取組状況に関する調査・公表」>
上記の取り組み状況を把握するため、荷主等の判断基準について物流事業者を対象とした定期的なアンケート調査が行われます。
・全ての荷主が評価対象:
特定荷主か否かにかかわらず、アンケート調査を通じて全ての荷主の取り組み状況が把握されます。
・「低い点数」も公表されるリスク:
優良事業者だけでなく、点数の低い事業者についても社名が公表される可能性があります。そのため、「特定荷主ではないから対応は不要」と放置せず、企業の社会的評価を守るためにも、着実な効率化が必要です。
【事例紹介】物流効率化の具体的アクション
<Case 1:トラック予約受付システムの導入(荷待ち時間の短縮)>

▲ 図:トラック予約受付システムの導入による荷待ち時間短縮の取り組み事例
トラック予約受付システムを導入することで、トラックの待機状況等を見える化し、待機車両を解消した事例です。
・導入前の課題:
フェンス沿いに10台程度のトラックが待機。早い者勝ちの納品ルールにより、現場のストレス蓄積や運送会社からのクレームも発生していた。
・取り組み内容:
トラック予約受付システムを導入。システム画面上で「荷卸中」「予約済み」「待機中」といったステータスの確認が可能に。
・導入後の効果:
待機車両が「ほぼゼロ化」。受付業務の省人化や作業スケジュールに準じた入荷が可能となったことで、庫内の労働生産性も大幅に向上。
<Case 2:納品基準のマニュアル共有とAI判定による基準統一化(検品効率化)>

▲ 図:納品基準のマニュアル共有とAI判定による基準統一化を通じた検品効率化の取り組み事例
飲料メーカー5社が共同で取り組み、納品における現場の「迷い」を解決した事例です。
・導入前の課題:
「外箱にへこみがある場合に納品してよいか」等の判断に時間がかかっていた。
・取り組み内容:
納入基準に関するマニュアルを共有し、AI判定による基準の統一化を実施。
・導入後の効果:
「ここまでなら納品可能」という判断基準が統一されたことで、現場での個別判断や迷いが解消され、スムーズな納品と効率化が実現。
③荷待ち時間の算定ルール
数値目標である「荷待ち時間等(荷待ち+荷役)で2時間以内」を正しく計測・管理するためには、荷待ち時間が開始されるタイミングについて正確に把握しておく必要があります。
<到着時刻・時間帯の指示の「有無」による算定方法(起算点)の違い>
■到着時刻・時間帯の指示がない場合:
到着した時刻(到着後速やかに受付等を行う場合はその時刻)から開始
■到着時刻・時間帯の指示がある場合:
1. 指示より「前」に到着した場合:指示時刻等から開始
・例:到着時刻を「12時」と指示したが、11時に到着した場合
→指示した時刻「12時」が荷待ち時間の開始時刻となる
2. 指示「内」に到着した場合:当該到着時刻(到着後速やかに受付等を行う場合はその時刻)から開始
・例:到着時間帯を「12時~13時」と指定し、12時30分に到着した場合
→到着時刻の「12時30分」が荷待ち時間の開始時刻となる
3. 指示より「後」に到着した場合:当該到着時刻(到着後速やかに受付等を行う場合はその時刻)から開始
・例:到着時間帯を「12時~13時」と指定し、14時に到着した場合
→到着時刻の「14時」が荷待ち時間の開始時刻となる
<実務上のポイント①:荷主等の責任によらず生じた荷待ち>
天候や交通事情、ドライバー都合等、荷主等の責任によらず生じた待ち時間は、荷待ち時間から「除外」することが可能です。
・具体例:
「13時」の到着指定に対し、渋滞で「15時」に到着。他車の作業が終わるのを待って「16時」に荷役を開始した場合、15時~16時の「1時間」は荷主の責任によらず生じた待ち時間として、荷待ち時間から除外することができます。
<実務上のポイント②:時間帯指定の重要性>
到着時刻の指示がない場合、トラックが到着した時点で荷待ち時間のカウントが開始されます。
・曖昧な指示のリスク:
「午前・午後」といった大まかな指示であっても、その時間枠内であれば、トラックが到着した時点で荷待ち時間のカウントが開始されます。
・推奨される対応:
荷待ち時間を短縮するためには、できる限り精度を高め、「13時~15時」というように幅を持たせても良いので、到着時間帯を特定することが重要です。
3. 「第一種荷主」「第二種荷主」の区分と貨物重量の算定範囲
物流効率化法では、年間の取扱貨物重量が「9万トン」を超える荷主を「特定荷主」として指定し、より厳格な義務を課します。この「9万トン」を算出するにあたり、自社がどの区分に該当し、どの範囲を合算すべきかを正しく把握する必要があります。
①第一種荷主と第二種荷主の定義
・第一種荷主:
自らの事業に関して継続して運送契約を締結する者で、主に「発荷主」が該当します。
・第二種荷主:
運送契約は締結しないが貨物の受渡しを行う者で、主に「着荷主」が該当します。
*ただし、荷受人がトラック事業者と運送契約をしている場合は、荷受人が「第一種荷主」、荷送人が「第二種荷主」となります。
②ケース別:取扱貨物重量のカウント方法
「特定荷主」の判定基準となる年間の取扱貨物重量は、以下のルールに基づいて算出します。
■ ケース1:社内物流(拠点間移動)の場合

▲ 図:自社拠点間移動(社内物流)での荷主区分と取扱貨物重量のカウント方法
・基本原則:
自社の拠点間で貨物を移動させる場合、荷送人と荷受人が同一(自社)となるため、その事業者が「第一種荷主」となり、第二種荷主は「該当なし」として扱います。
・重量の計上:
引渡しまたは受取りのいずれか一方のみを、第一種荷主としての重量に計上します。

▲ 図:【注意点】複数拠点を経由する際の重量計上の考え方
<複数拠点を経由する場合の注意点>
同じ貨物であっても、複数拠点を経由し運送する場合は、受渡しが生じるたびに重量に計上する必要があります。
・例:Mトンの貨物を「自社倉庫①→自社工場②→外部倉庫H(寄託先)」へ運送
それぞれの区間でMトンずつ、合計で「2Mトン」を第一種荷主として計上しなければなりません。
■ ケース2:物流子会社や3PLを利用する場合

▲ 図:物流子会社・3PL事業者を利用する場合の荷主判定と取扱貨物重量のカウント方法
物流子会社や3PLを利用する場合、「実運送の契約は物流子会社や3PL事業者が行っているから、自社は第一種荷主・第二種荷主には該当しない」という誤解が多く見られますが、これは誤りです。
・基本原則:
物流子会社や3PL事業者が自らの名義で貨物自動車運送事業者(実運送人)と運送契約を締結していても、物流子会社・3PL事業者と物流業務委託を締結した事業者が法律上の「荷主」とみなされます。
・重量の計上: 物流子会社・3PL事業者に物流業務を委託している場合、実運送の契約主体が誰であるかを問わず、物流業務を委託した元の事業者(荷主)が「第一種荷主」または「第二種荷主」として重量を計上します。
■ ケース3:商社を介する場合
商社を介する場合には、「誰が運送契約を締結しているか」によって、第一種荷主・第二種荷主に該当するかが決まります。
<仕入元・販売先が運送契約を締結する場合>

▲ 図:仕入元・販売先が運送契約を締結する場合の荷主判定と重量計上
商社を介した取引であっても、運送契約を仕入元または販売先が締結し、仕入元と販売先との間で直接配送・受渡しを行う場合は、商社は法律上の「荷主」には該当しません。
・第一種・第二種荷主の判定:
第一種荷主:運送契約を締結する事業者
第二種荷主:運送契約は締結しないが、実態として貨物の受渡しを行う事業者
・重量の計上:
この場合、商社は所有権を一時的に持つものの、運送の実務には関与しないため、重量計上の義務も発生しません。第一種荷主・第二種荷主に該当する事業者が、重量計上の対象となります。
<商社が運送契約を締結する場合>

▲ 図:商社が運送契約を締結する場合の荷主判定と重量計上
・第一種・第二種荷主の判定:
第一種荷主:商社
第二種荷主:仕入元(荷送人)・販売先(荷受人)
【実務上の注意点】
商社が運送契約を締結する場合、仕入元は「第一種荷主」からは外れますが、自らの貨物を運んでもらう主体として「第二種荷主」に該当します。仕入元・販売先はそれぞれ「第二種荷主」として重量を計上しなければなりません。
4. 特定荷主の判定・届出と法的義務への対応
①特定荷主の判定と届出
第一種荷主・第二種荷主として、前年度の取扱貨物の合計重量が9万トン以上となる場合は「貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書」を提出する必要があります。
<第一種荷主・第二種荷主の判定ルール>
第一種荷主・第二種荷主としての重量は合算せず、それぞれ独立して判定します。
例:
・第一種5万トン + 第二種5万トン = 合計10万トン → いずれも非該当
・第一種10万トン + 第二種5万トン → 第一種荷主のみ該当
・第一種10万トン + 第二種10万トン → 第一種荷主・第二種荷主双方に該当
<届出のタイミングと期限>
本制度は「自主申告制」です。基準重量の9万トンを明らかに超えているにもかかわらず届出を行わない場合は、罰則の対象となります。
・提出期限:基準重量を上回った年度の翌年度5月末日
・直近のスケジュール:2026年5月末に制度がスタートするため、2025年度の実績を正確に把握しておく必要があります。
・継続性:すでに特定荷主として指定されている事業者は、改めての提出は不要です。
<届出先>
届出先は一律ではなく、自社の事業に応じた「荷主事業所管大臣」となっています。
<特定荷主の取り消し>
一度特定荷主に指定されると、単年で9万トンを下回ったとしても、一時的な数量の変動だけでは取り消されません。
・取り消しが認められる場合:
廃業や大規模な事業譲渡等、「再び当該基準重量以上となることがないと明らかに認められる」場合に限られます。
・取り消しの手続き:
「特定荷主指定取消申出書」の提出が必要です。
②実務に即した重量の算出手法と換算ルール
重量の算出方法は、2025年8月に公布された「物資の流通の効率化に関する法律の規定に基づく荷主に係る届出等に関する命令」の第一条(第一号〜第八号)で示されていますが、実務上のポイントは以下の3点となります。
1. 独自に定める合理的な計算方法の適用
第八号で「一~七の方法により対象貨物の重量を算出することが困難であると認められる場合に、当該対象貨物の重量を適確に算定できると認められる方法」と定められています。そのため、自社で合理的な計算方法を準備して対応することも可能です。
2. サンプル調査や換算の活用
全数を調査する必要はなく、主な算出方法として以下のような手段も認められています。
・サンプル調査の実施:サンプル調査を行い、「平均積載量」などを設定して計算することが可能です。
・容積からの換算:1立方メートルあたり280kgとして換算することが可能です。
3. 算定において考慮しないことができる重量
・郵便物
・信書便物
・特別宅配貨物
・軽量な資材や事務用品
③特定事業者が負う法的義務の内容
特定事業者に指定されると、「中長期計画の提出」「物流統括管理者(CLO)の選任」「定期報告書の提出」の3つの法的義務が発生します。
Ⅰ. 中長期計画
<計画に盛り込むべき3つの柱(努力義務項目)>
計画には、以下の項目を実施するための具体的な措置を定める必要があります。
・運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加(積載率の向上)
・荷待ち時間の短縮
・荷役等時間の短縮
<提出期限と継続時の対応>
・期限:特定荷主の指定を受けた年度の7月末日(2026年度のみ、10月末日)。
・継続時の対応:前年度から内容に変更がない場合は、提出から5年後の7月まで提出は不要。
<計画期間と内容>
・計画期間: 指定を受けた年度を初年度とし、5年を超えない範囲。
・計画内容: 実施措置、計画内容(具体的な措置内容、目標等)および実施時期を記載。
■中長期計画に関するQ&A
Q:複数の事業を実施しているが、社内の全ての事業について、中長期計画を作成する必要があるのか?
A:主要なものであったり、あるいは物流効率化について課題のある貨物や施設、時期などに重点を置いた記載でも良いとされています。
Q:中長期計画の記載内容について、指導等がなされるか?
A:定期報告において改善が進まない事項、施設等について、中長期計画に記載がない場合は、記載を促す指導を行う可能性があります。
上記に加え、「既に十分な効率化が図られている場合/事業特性によりこれ以上の効率化が困難な場合」ついて、さらに詳細なQ&Aは、ガイドブック「物流法改正 実務Q&A決定版」をご覧ください。
https://optimind-5692862.hs-sites-na2.com/qa/202604
Ⅱ. 物流統括管理者(CLO)
<選任・届出の時期>
・初回:指定の通知を受けた後、速やかに「物流統括管理者選任・解任届出書」を提出。
*遅くとも、中長期計画・定期報告書を提出するまでを目安とします。
*2026年度については10月末までに選任・届出を行う必要があります。
・変更時:CLOに変更があった場合は、直後の届出は必須ではなく、次の中長期計画または定期報告書を提出するタイミングで届け出ることが目安とされています。
<CLOの主な業務>
・計画・報告:中長期計画書、定期報告書の作成
・運営方針・体制整備:ドライバーの負荷軽減およびトラックへの過度な集中の是正に向けた、事業の運営方針の策定、管理体制の整備
・社内連携:関係各部門の連携体制の構築、効率化に関する従業員の意識向上
・システム・設備等の標準化:システム・設備・データ等の整備および標準化に関する計画の作成、実施および評価
・社外連携・調整:取引先その他の関係者との連携・調整(最も重視される業務)
・行政対応:報告徴収への対応
<CLOに求められる責務>
・着荷主側への対応・交渉:
着荷主による違反原因行為等に対し、改善要請や補填要請の交渉等を実施する必要があります。
・社内外の調整:
社内の連携に加え、取引先や他社を含めた物流業務の適正化を図るため、社内外の調整が可能な役職・人材であることが不可欠となります。
・物流効率化の推進:
発荷主・着荷主いずれの立場からも物流効率化に向けた取り組みを推進する必要があります。
・コンプライアンス遵守体制の構築
<実務上の指針>
・組織的なバックアップ:
全ての責務をCLO一人で担うのは困難であるため、組織として対応していく体制を整えることが重要です。
■物流統括管理者に関するQ&A
Q:荷主の親会社の役員を、荷主の物流統括管理者に選任することができるか?
A:当該役員が、荷主に籍を置いていないのであれば選任はできません。逆に言うと、兼任という形で籍を置いているのであれば、兼務は可能です。
Q:着荷主側の都合により、想定以上に荷待ち時間が発生。運送事業者から荷待ち時間相当額が請求された場合、運送事業者に対して当該費用を支払う義務があるのか。
A:負担しない場合、取適法上の「不当な経済上の利益提供要請」に該当する可能性があります。発荷主側からすると、着荷主側の事情で費用が発生した場合でも、まずは発荷主側が運送事業者に対して責任を負うことになるため、着荷主側に負担するよう、求めていくことが重要と考えられます。
【着荷主側の課題と行政の対応】
<運送契約の主体と現場の実態>
・コスト負担のねじれ:
多くの場合、発荷主が運送契約を締結し、運賃や諸料金の支払いを担っています。しかし、着荷主側が費用を負担していないにもかかわらず、運送事業者に無償で付帯業務を行わせる行為がみられており、問題視されています。
・長時間の荷待ちの実態:
国土交通省が公表している資料において、着荷主側の事情によって長時間の荷待ちが生じているというアンケート結果が出ています。
<行政による監視と指導の動向>
・着荷主への初勧告(2025年12月23日):
長時間の荷待ちをさせた疑いがあるとして、国土交通省は貨物自動車運送事業法に基づき、着荷主側に対して初となる「勧告」を行いました。
・トラック・物流Gメンによる是正指導:
2025年10月〜11月に行われた集中監視月間では、計371件の荷主・元請けに是正指導が実施されました。今後も運送事業者との取引を厳しく監視していく方針が示されています。
Q:着荷主が、委託内容にない荷下ろし作業の無償提供を、運送事業者に要請していることが、半年後に判明。運送事業者より、当該作業費は請求されていなかった。着荷主が、運送事業者との間で直接契約関係にない以上、運送事業者が無償で応じた場合、発荷主による、取適法上の「不当な経済上の利益提供要請」と認められるのか。
(例:元々の契約には「荷下ろし」は含まれていなかったものの、着荷主から「フォークリフトを使って下ろしてほしい」と指示され、1時間ほど従事した。しかし、その費用は運送会社から請求されていなかった。)
A:運送事業者が発荷主に対して「対応の要否」を確認していない場合には、発荷主による「要請」が存在しないため、違反と認められる可能性は低いと考えられます。もっとも、着荷主による利益提供要請を発荷主が認識していた場合、例えば直接言われていなくとも噂で聞いていたり、状況を目にしていたりした場合には、事実上の「要請があった」と認められるリスクがあるため、ご留意ください。
上記に加え、「物流統括管理者の選任人数」ついて、さらに詳細なQ&Aは、ガイドブック「物流法改正 実務Q&A決定版」をご覧ください。
https://optimind-5692862.hs-sites-na2.com/qa/202604
Ⅲ. 定期報告書
毎年度、努力義務への取り組み状況および荷待ち時間等の状況等について「定期報告書」を提出する必要があります。
<提出期限・報告対象>
・提出期限:指定を受けた年度の翌年度から、毎年度7月末日
*2026年度に指定を受けた場合は2027年7月末日までとなります。
・報告の区分:第一種荷主・第二種荷主、それぞれの取り組み状況を分けて記載する必要があります。
【荷待ち時間等の計測に関するサンプリング手法】
荷待ち時間等の計測に関しては、一定の条件下でのサンプリングが認められています。
<対象施設>
・全ての施設に関して計測する必要はなし
・取扱貨物重量の半分程度を把握
・年間において取扱貨物の重量が大きい施設、または改善のために実態を把握すべき施設が対象
<計測から除外可能な施設>
・寄託倉庫など自社が管理しない施設の貨物重量は、計測対象施設を選定するに当たって除くことが可能
<対象期間>
・四半期ごとに任意の連続した5営業日以上
<対象運行>
・原則:対象施設で計測した全ての運行
<報告の省略が可能なケース>
・荷待ち等時間が1時間未満の場合
・業界特性等により荷役等時間の短縮が困難な場合
(例:危険物を扱うことから、安全確認のため時間を要する等)
・環境特性のため、時間を要する場合
(例:駐車場から受渡場所が離れている等)
【荷待ち時間等計測に関するサンプリング事例】自社管理施設(工場・倉庫・店舗)と寄託倉庫があるケース(第一種荷主の場合)

▲ 図:定期報告における荷待ち時間等計測に関するサンプリング事例
1. 計測の母数の確定:全体の取扱重量から、計測対象から除外できる「寄託倉庫」分を差し引きます。
工場合計16万トン + 自社倉庫1万トン + 寄託倉庫1万トン = 全体18万トン
18万トン - 寄託倉庫1万トン = 自社管理分17万トン
2. 把握すべき重量を算出:自社管理分の重量の半分程度を把握
17万トン ÷ 2 = 8.5万トン
3. 対象施設の選定パターン:8.5万トン以上を占める主要施設を選定します。
【パターン1】工場出荷4万トン × 2 + 自社倉庫出荷1万トン = 9万トン
【パターン2】工場出荷4万トン × 2 + 自社店舗入荷1万トン = 9万トン
【パターン3】工場出荷4万トン × 3 = 12万トン
5. 今後のスケジュール・罰則等
①今後の主なスケジュール
・2025年秋頃:判断基準に関する調査等の実施
・2026年4月1日:物流効率化法の施行
特定事業者の指定、物流統括管理者(CLO)の選任・中長期計画の提出・定期報告書の提出等が開始されます。
・2026年5月末:特定事業者の届出~指定手続
指定後、速やかに物流統括管理者(CLO)の選任・届出を行う必要があります。
・2026年10月末:中長期計画書の提出
・2027年7月末:定期報告書の提出
②行政による監督
取り組みが不十分または報告に不備がある場合、段階的に以下の監督が行われます。
・指導・助言:
判断基準を勘案して必要な指導・助言が行われます。
・報告徴収・立入検査:
必要に応じて状況に関する報告が求められたり、荷主の事務所等への立入検査が行われます。
・勧告・公表・命令:
取り組みが判断基準に照らして著しく不十分な場合は勧告、勧告に従わない特定荷主に対してはその旨が公表されます。勧告を受けた特定荷主が、正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかった場合は、当該措置を行うよう命令が出されます。
③荷主に対する罰則
義務違反や虚偽の報告等を行った場合、以下の罰則が科せられるため、注意が必要です。
<50万円以下の罰金>
・特定荷主の指定に係る届出を行わない、または虚偽の届出をした場合
・中長期計画を提出しない場合
・定期報告を行わない、または虚偽の届出をした場合
・報告徴収の際に報告をしない、または虚偽の報告をした場合
・立入検査を拒み、妨げ、または忌避した場合
<100万円以下の罰金>
・命令に違反した場合
・特定荷主が物流統括管理者を選任しない場合
<20万円以下の過料>
・物流統括管理者の選任・解任の届出を行わない、または虚偽の届出をした場合
さいごに
当記事では、セミナー第1部「荷主向け 物流効率化法の要点と実務対応」から主要なポイントを抜粋してご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
2026年4月の「物流効率化法」本格施行により、一定規模以上の荷主には「中長期計画の提出」「物流統括管理者(CLO)の選任」「定期報告書の提出」といった一連の法的義務が課されることとなります。荷待ち時間等の短縮や積載効率の向上といった数値目標への対応を含め、荷主に求められる実務対応はより具体的かつ厳格なものへと変化します。
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同セミナーの第2部「事例で見る:法令対応と輸配送改革」の内容をご紹介する記事も掲載いたしますので、そちらもぜひご覧ください。
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