2023年5月、ユアサ商事株式会社様の自社便拡大への取り組みを紹介するオンラインセミナーを開催いたしました。
ユアサ商事様は、2026年に創業360年を迎える専門商社であり、国内31拠点、海外10か国23拠点にて事業を展開されています。「ものづくり」「すまいづくり」「環境づくり」「まちづくり」を主なフィールドとし、約6,000社の仕入先様、約20,000社の販売先様と人・モノ・資金・技術・情報・データを「つなぐ」ことで、新たな価値や市場の創出、社会課題の解決へと取り組まれています。
当記事では、ユアサ商事株式会社 総合企画部 ロジスティクス戦略室 課長補佐 小林様のお話をもとに、ユアサ商事様の自社便拡大への取り組みについて、Loogia導入前の課題や具体的な取り組みの進め方、Loogiaに対する評価などを交えてご紹介します。
ユアサ商事様の物流について

ユアサ商事様では全国7か所に物流拠点を展開しており、物流拠点の運営は各地の3PL業者様へアウトソーシングを行っています。北海道から沖縄まで全国配送を実施しており、配送には「路線便」「自社便」の二通りの手段を採っています。
一つ目の配送手段である「路線便」では、佐川急便様や西濃運輸様といった大手の路線業者様に商品の配送を依頼しています。二つ目の「自社便」では、関東物流センター、中部物流センター、関西物流センター、九州物流センターの主要4拠点で自社の専用車両を用いて商品配送を行っています。

注文から納品までの流れとしては、自社のECサイト「Growing Navi」もしくはメールやFAXを通してお客様よりご注文を受け付けています。受注後は倉庫内でピッキングや梱包を行い、配送作業へと移ります。当日のオーダーは当日中の出荷を基本としているため、締め直前のオーダーはピッキングから出荷まで最短15分で行うこともあります。
自社便の配送エリアは拠点から半径30km程度の近距離が対象となっており、配送件数は 1便当たり10件前後、車両は軽や2t車など小型車を中心に使用しています。
Loogia導入前の課題

Loogia導入前の課題としては、二つの業務課題と社会課題がありました。
一つ目の業務課題である「低水準な自社便積載率」では、日々荷量の大小にかかわらず固定のルートで配送を行っていたため、日により便により積載量のムラが大きく、積載率が思うように伸びないことが問題となっていました。また、二つ目の業務課題である「配送手段の偏重」では、約8割の商品を路線便による配送としていたため、大手ECサイトのセールなどが開催される期間には、時折集荷や配送日数の延長などが発生することもあり、路線便への過度な依存は配送業務のリスクになり得ると危惧していました。
これらに加えて、物流の2024年問題や輸配送における環境負荷など社会課題への対応も求められており、課題解消に向けた取り組みの推進が必要であると考えました。

本取り組みの目指す姿は、保有する自社便を最大限活用し効率的な配送業務を構築するというものです。新たに車両を増やすのではなく、今ある車両を最大限活用することに重きを置きました。
自社便活用に向けた施策として、これまでの固定された配送ルートを廃止し、当日のオーダーに応じた変動ルート配送を実施することで、走行距離や時間の短い最適なルートでの配送を実現させたいと考えました。また、自社便の利用効率向上を図るため、これまで路線便で配送していた先を自社便に取り込むことができないか検証を進めていくこととなりました。
そして、こうした施策をサポートするシステムを探していたところ「Loogia(ルージア)」と出会い、導入を決定しました。
Loogia導入にあたって
Loogia導入への障壁

Loogiaの導入にあたり、障壁となるものもありました。
まず、「誰がやるのか」という問題で、委託先の3PL業者様は庫内業務で手一杯の状態で、各拠点の物流センター長からも「改善はしたいが、リソースが追いつかない」という声が挙がっていました。そこで、今回の取り組みでは配送業者の変更や配送時間の延長などお客様との調整が必要となる場面も多くあるため、荷主企業であるユアサ商事様がLoogiaを導入し、3PL業者様と協働しやすい環境作りを進めていくことになりました。
また、「どこから手をつけるか」という問題については、現状の業務を客観的に捉え、導入効果の有無を見極めた上で判断することとなりました。
具体的な取り組みの進め方

具体的な取り組みとしては、まず現状認識を図るため、関東・中部・関西の3つの物流センターを対象に、配送エリアの調査とLoogiaの配車シミュレーションによる効率化の見込みの確認を進めていきました。倉庫管理システムのデータをもとに、路線便配送のなかで自社便配送が可能なエリアの割合を特定していき、また、出荷実績をもとにした配車シミュレーションを行うことで自社便の必要車両台数を計算していきました。
その結果、効率化が見込まれる中部物流センターと関西物流センターをLoogia導入拠点として選定しました。

次に、継続的に改善のサイクルが回るよう運用の作成を行いました。
毎日行う配送ルートの計算は、自社便の走行ルートを作成するためのものです。一方、随時行うシミュレーションの作業では、自社便と路線便とを混在させて配車計算を行い、仮に路線便のルートを自社便で回った場合、どのようなルートになるのかを確認していきます。その結果をもとに、路線便を自社便に切り替えるかどうかを物流センターの配車係が判断し、切り替えを行う場合は申請書を提出するという流れになっています。
Loogiaへの評価
Loogiaを活用して良かった点

Loogiaを活用して良かった点としては、まずLoogiaにより算出された配送計画と実走との乖離が非常に少ないということでした。実際に、物流センターのベテランドライバーからも「実走と計画とで到着時間にほぼ差がない」という声がありました。
定量的な効果としては、2022年の1月から約1年半で、路線便から自社便への切り替えが中部では78件、関西では41件実施されています。これにより、実施前と比べて自社便の積載率は10%アップ、自社便の配送個口数も月間15%拡大しました。
また想定外の効果として、配送件数や業務量が均一化されたことでドライバー同士の風通しが良くなったという意見もあります。他にも、自社便の割合が増えたことで簡易梱包が増え、庫内作業にも良い影響を与えています。
Loogia導入のポイント

Loogia導入のポイントは、メリットだけでなく導入リスクへの理解が必要だということです。例えば、毎日ルートの作成を行うという運用方法を採っていますが、その場合には当然のことながら固定ルートと比べ配車係の手間は増えてしまいます。また、配送先のリストなどがデータ化されていないと導入が難しいという点もリスクとして考えられます。しかしこの点に関しては、「配送データさえあれば比較的早く導入が進む」ともいうことができ、実際に2021年9月にLoogiaを紹介されてからおよそ3か月後の12月には、配車業務にLoogiaを組み込む体制が構築できました。「導入をした」というだけでなく、利用開始後に改善するサイクルを予め作成しておくことも重要だと感じています。
今後の取り組みについて
今後の取り組みとしては、路線便にフォーカスした越境配送の低減を進めています。一部エリアを例として挙げると、現状は域内配送が6割に留まり、残り4割が越境配送となっています。そこで、適材適所に在庫を配置しお客様により近い拠点から商品を配送することで、越境配送を2割まで抑え、路線便ドライバーの長距離輸送の負担軽減やCO2排出量の削減など、多方面にわたるメリットの創出を目指しています。
今後も物流改革に向け、自社便・路線便両面での取り組みを継続していきます。
さいごに
当記事ではユアサ商事様の自社便拡大への取り組みについて、Loogia導入前の課題や具体的な取り組みの進め方、Loogiaに対する評価などを交えてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
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