物流拠点は、企業のサプライチェーンにおいて重要な役割を担っています。
戦略的に運営することにより物流全体の効率性や競争力を大きく向上させることができます。
本記事では、物流拠点の種類や役割、「集約型」「分散型」という運営戦略それぞれのメリット・デメリットを解説し、物流拠点最適化のためのポイントを紹介します。
物流拠点とは?
物流拠点は、企業のサプライチェーンにおける中核施設として、商品の保管、梱包、仕分け、流通加工、配送準備など、物流プロセスの各段階を一元的に管理するための施設です。
主な物流拠点としては下記が挙げられます。
配送センター(DC:Distribution Center)
配送センターは、管轄するエリア内での輸配送の拠点となる施設です。
納品業者から届いた商品を集約・保管し、検品等をしたのち、エリア内の小売店や配送業者へ効率的に再配分します。
フルフィルメントセンター(FC:Fulfillment Center)
主にEC市場に対応するために設計された施設です。
受付注文から商品のピッキング、梱包、発送までの一連のプロセスを高度に自動化されたシステムで実行することにより、短納期配送と高い顧客満足度の実現を目指します。
ハブセンター
複数の配送拠点や倉庫を抱えるネットワークの中心として機能します。
各地域から集まった商品を一時保管・仕分けし、適切な拠点へ再分配することで、全体の輸送効率を高め、配送の迅速化に貢献します。
クロスドックセンター
保管機能を持たず、入荷した商品を即座に仕分けし、積み替えて出荷を行う施設です。
在庫保管期間を極力短縮できるため、特に鮮度や品質管理が求められる商品の配送に適しています。

物流拠点は集約型と分散型の2種類
物流拠点は商品保管の場としてだけでなく、物流全体の効率性と競争力向上に重要な役割を果たします。
したがって戦略的に物流拠点の運営を行う企業も増えています。
物流拠点の運営戦略は、大きく「集約型」と「分散型」の2種類に分けられます。
物流拠点の「集約」のメリット
物流拠点の集約とは、複数の拠点を統合し、より少ない拠点にまとめることで運営効率を高める戦略です。
メリットは下記3点が挙げられます。
物流コストの削減
複数の拠点を統合することで、施設費、人件費、光熱費などの固定費や管理コストを大幅に削減できます。
システムや自動化技術を導入する際には、対応拠点が少なく済み、初期投資を抑えながら運用効率を向上させることができます。
在庫管理の効率化
拠点数が少ないことで在庫の一元管理が容易になり、必要に応じて迅速な再配置も可能になります。欠品や過剰在庫などのリスク低減にもつながります。
オペレーションの一元化
業務プロセスを統一することで、作業の標準化が進み、ヒューマンエラーが減少します。
また情報共有がスムーズになり、迅速な意思決定と柔軟な運用改善も可能になります。
物流拠点の「集約」のデメリット
デメリットとしては下記が挙げられます。
配送リードタイムの増加
物流拠点を統合することで、一拠点で対応するエリアが広くなり、遠方の顧客や販売店への配送にかかる時間が増加します。
自社の物流網の全体像を把握し、適切な拠点の配置を検討する必要があるでしょう。
BCP(事業継続計画)のリスク分散ができない
拠点が集中していることで、災害等のトラブルが発生した際に代替手段を用意することが難しく、事業継続のリスクとなる可能性があります。
BCPの重要性が高まっている背景から、コスト増加等のデメリットに反して「分散」の戦略を検討する企業が増えています。
柔軟な対応が難しくなる
地域ごとの特性やニーズの変動への迅速な対応が難しくなります。
例えば、繁忙期には単一の拠点で対応するには限界があり、出荷遅延が発生しやすくなります。
また地域ごとに異なるニーズに対し、配送リードタイムの増加や、特定地域への供給不足も起こりやすくなるでしょう。
物流拠点の「分散」のメリット
物流拠点の分散とは、複数の地域に物流拠点を配置し、それぞれのエリアで配送や在庫管理を分担する運営戦略です。
メリットは下記が挙げられます。
配送リードタイムの短縮
各地域の近くに物流拠点を配置することで、配送距離を短縮し、配送時間を大幅に削減できます。特に都市部では、ラストワンマイル(最終拠点から顧客までの配送)の効率化が課題ですが、分散型拠点を活用することで、より小回りの利く配送体制を構築できます。
BCP(事業継続計画)の強化
物流拠点を分散することで、リスクも分散し、事業の継続性を確保しやすくなります。
例えば自然災害や物流システムの障害等が発生した際には、別の拠点を代替拠点として稼働させることで、業務の完全停止を防げる可能性があります。
需要変動への柔軟な対応
消費者のニーズは、地域ごと・季節ごとに変動します。
分散型拠点を活用することで、季節性商品の優先確保による適時配送や、注文急増の際の負荷分散が可能になり、最適な物流体制の構築につながります。
物流拠点の「分散」のデメリット
物流コストの増加
施設の賃貸料や管理費、人員の確保等の運営コストはもちろん、物流拠点間の在庫移動のコストもかかってきます。
またシステム導入等の際には物流拠点の数だけ初期投資や運用にコストがかかります。
在庫管理が複雑化
物流拠点が増えることで在庫管理が複雑になります。
各物流拠点での在庫状況を細かく管理・調整する必要がある上、物流拠点毎に見ると過剰在庫や欠品の発生もしやすくなります。
他の物流拠点から在庫を補充する際には、移動にかかる時間やコストも考慮しなければなりません。
オペレーションの統一が難しい
物流拠点が増えることで、異なる運用方法やルールが生まれやすくなり、全体のオペレーションの統一が難しくなります。
これにより品質や効率にばらつきが生まれたり、情報のズレが発生しやすくなります。
物流拠点最適化のための戦略
物流拠点の最適化は、企業の物流コスト削減、配送リードタイムの短縮、在庫管理の効率化、ひいてはサプライチェーン全体の生産性向上を実現するために重要です。
近年では、データ分析やシミュレーション技術の発展により、合理的な拠点の最適化が実現しやすくなっています。
本章では、物流拠点を最適化するために必要なポイントを詳しく解説します。
物流拠点の適正配置のためのポイント
物流拠点を適正に配置するためにはどうしたら良いでしょうか。
検討すべきポイントとして大きく下記3点が挙げられます。
市場ニーズの分析
まず重要なのは「市場のニーズを正しく認識すること」です。
どの地域にどの程度の物流量が発生しているのかを把握し、状況に応じた拠点の配置を検討します。 注文パターンを分析することで、拠点の統廃合や新規設置の計画を立てやすくなります。
また一時的な在庫拠点を設置するなどの対策も検討すると良いでしょう。
例えば、年末の商戦やセール期間中は注文が急増するため、拠点のキャパシティと在庫戦略を考える必要があります。
地理的条件の考慮
高速道路や主要幹線道路、鉄道、港湾、空港など、物流の重要ルートにアクセスしやすい場所を選定することで、輸送効率を高めることができます。
特に、EC物流では迅速な配送が求められるため、主要な交通インフラとの接続性は重要な要素です。
また物流会社や宅配業者との協力体制を考慮し、スムーズな荷受け・配送ができる場所を検討すると良いでしょう。
例えば、各配送業者のハブセンターに近い場所を拠点とすることで、リードタイムの短縮が可能になります。
物流拠点数の最適化
物流拠点の数は適正なバランスを考えることが重要です。
多すぎると運営コストの増大、在庫管理の複雑化等が発生し、少なすぎると配送にかかる時間の増加やBCP上のリスクが高まる恐れがあります。
したがって、事業の規模や分散エリア、顧客ニーズを考慮し、最適な拠点数を決定する必要があります。
ITシステムを活用し、統廃合や新設のシミュレーションを行うことで、コストや配送効率への影響を定量的に評価し最適な物流拠点数を検討することも可能です。

IT・データ活用のためのポイント
近年は物流業界でも、AIやIoT、クラウドシステムの活用が進んでいます。
その中で物流拠点の最適化にもデータ活用が検討されています。
以下のようなITツールを導入することで、より精度の高い戦略策定が可能になります。
需要予測AIの導入
需要予測AIは、過去の販売データや市場動向、季節性、トレンドなどの多様なデータを分析し、将来的なニーズを高精度で予測する技術です。
AIが分析したデータをもとに、新たに拠点を設置するべき地域や、統廃合が可能な拠点を特定し、拠点の最適化を進めることができます。
また季節性の商品やセール・キャンペーン時期の需要変動を事前に把握し、適切な在庫量をコントロールすることで過剰在庫や欠品を防止することも可能です。
さらに調達計画の精度向上、無駄な生産の削減による生産性向上、あらかじめリソースを確保することによる配送遅延の防止などサプライチェーン全体の最適化につながります。
輸配送管理システム(TMS)の導入
輸配送管理システム(TMS)は、物流プロセス全体の計画、実行、追跡、分析を一元管理するためのITツールです。
交通状況、天気、道路状況、配送先の位置情報など多くのデータを解析し、最も効率的な配送ルートを自動で算出することで、配送距離の短縮や燃料費、時間等のコスト削減が期待できます。
TMSでは、GPSやIoT技術と連携して、各車両の位置情報、走行状況、到着予定時刻などをモニタリングできます。これにより、配送状況の透明性が向上し、万一のトラブル時にも迅速な対応が可能となります。
またTMSで蓄積した過去の配送実績のデータと需要予測を組み合わせることで、繁忙期の配送計画や車両の追加など、柔軟な計画の策定や物流拠点の最適化に役立てることもできます。
Loogiaコンサルティングの拠点最適化シミュレーション
物流拠点の最適化は、企業の競争力を高めるための重要な施策です。
適切に物流拠点を配置することで、配送リードタイムの短縮、物流コスト削減、在庫管理の適正化、サプライチェーンの強化など、多くのメリットが得られます。
しかし、拠点の新設や統廃合は、事業の運営に大きな影響を与えるため、慎重な判断が求められます。
オプティマインドでは、物流拠点の見直しを検討されている企業様向けに、データドリブンなアプローチによって拠点最適化を支援する「Loogiaコンサルティング」を提供しています。
Loogiaコンサルティングでは、弊社が創業以来開発・提供しているラストワンマイル向けの自動配車システム「Loogia」の活用パターンと、物流改善のノウハウをベースに、定量的なデータ分析や、複数パターンのシミュレーションを実施の上、各社様に最適な物流戦略をご提案可能です。
まとめ
物流拠点は単なる倉庫としての役割にとどまらず、物流の効率性向上やコスト削減等に影響を与える大きな要素の一つとなっています。
そのため企業は成長戦略の一環として物流拠点の最適化に取り組む必要があります。
しかしながら物流拠点の運営戦略である「集約」と「分散」にはそれぞれメリット・デメリットがあり、企業によって適した戦略が異なるため、データに基づいた戦略的な意思決定が求められます。
より効率的で持続可能な物流ネットワークの構築に向けて、ぜひ物流改善の幅広い知見と物流に特化したデータ活用のノウハウを有するLoogiaコンサルティングの拠点最適化シミュレーションをご活用ください。