昨今の情勢の変化により人件費や燃料費は上昇し、物流コストが増加を続けています。その要因や内訳の把握はできているでしょうか? 物流コストの増加は利益率の圧迫につながります。コストをコントロールすることは荷主事業者/物流事業者において、必要不可欠です。本コラムでは、物流コストが増加する要因、コスト削減の方法や事例をご紹介します。
物流コストが上昇する要因とは
物流コストは製造業から小売業まで、あらゆる産業にとって関わりが深いものです。一方で顧客サービスと物流コストはトレードオフの関係にあり、重要な経営課題にもかかわらず、現実的には顧客サービスの品質と天秤にかけることが多いのではないでしょうか。
そんな中でも、コスト上昇は待ったなしの状況が続いています。日本ロジスティクスシステム協会によれば(※)、全体売上高に対する物流コスト比率は全業種を平均して約5%で、直近では多少減少した時期もありましたが、長期的には上昇傾向であると報告されています。
では一体、どんな要因でコストが上昇するのでしょうか。物流コストが増加する主な要因は以下の4点です。
※参考:日本ロジスティクスシステム協会 2023年度 物流コスト調査報告書【概要版】
1.人件費の高騰
人手不足が主な要因となり、人件費が高騰しています。
令和6年2月の有効求人倍率が全体で1.17倍であるのに対し、輸送・機械運転従事者は2.18倍、自動車運転従事者に限れば2.58倍となっており物流業界は人手不足の状態です。
人手不足を解消するために待遇を改善したり採用に費用を割いたりする必要があり、人件費が高騰しています。
参考:厚生労働省 一般職業紹介状況
2.燃料費の上昇
燃料費の価格変動は運送コストに直接影響を及ぼします。
価格変動の要因には、円安の進行による輸入コスト増加が挙げられます。また、日本は輸入している原油の94%を中東に依存しているため、中東情勢の変化も燃料費上昇に関わっています。
3.物流需要の増加
ネットショッピングを利用するユーザーが増えることで、購入方法が多様化しています。翌日配送や複数の受け取り方法の選択など、顧客が求める物流ニーズが増えています。宅配便の取扱実績数は2019年で約43億個であったのに対し、2022年には約50億個と16%増加しています。ネットショッピングの利用拡大に伴い宅配便の物量は急速に増加している状況です。
参考:令和4年度宅配便・メール便取扱実報道発表資料- 国土交通省
令和元年度 宅配便取扱実績につい- 国土交通省
4.規制やコンプライアンス強化で発生するコスト
環境規制や、より厳格化が進む安全基準の遵守に必要となる設備投資や運用コストの増加によって物流コストが上昇します。環境規制の例では、物流におけるCO2排出量は日本全体の18.5%を占めており、削減が求められています。2020年、菅義偉内閣総理大臣所信表明演説にて発せられた「2050年カーボンニュートラル」宣言では、中間目標として2030年度までに46%の削減を目標に、運輸部門では35%の削減が目標値として設定されています。
参考:環境:運輸部門における二酸化炭素排出量- 国土交通省
地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)- 環境省
物流コスト削減のために、内訳の可視化を
物流コストは「輸送費」「倉庫・保管費」「梱包費用」「荷役費」「管理費用」などで構成されます。販売や製造に関する費用は把握していても、物流に関する費用は支払物流コストなど一部しか把握できていない企業は少なくありません。全体の物流コストを削減するためには、あいまいになりがちな内訳を可視化することが大切です。
輸送費
輸送費は、製品を製造地から顧客や次の生産プロセスへ運ぶための費用のことです。物流コストの中でも大きな割合を占めます。
倉庫・保管費
倉庫・保管費は、製品を保管するためのスペースやそれに関連する管理費用のことです。 具体的には、倉庫の賃貸料、倉庫の運営に必要な人件費、設備投資及び保守費が挙げられます。
梱包費用
梱包費用は、商品を保護し輸送や保管中の損傷から守るための梱包材料の作業費用のことです。一例としてダンボール、粘着テープ、紙などの包装資材の費用があります。
荷役費
荷役費は、倉庫で一時保管中に発生する、倉庫内貨物の運搬などにかかる費用のことです。主な荷役費用としては、商品の入出庫・ピッキング・積み下ろし・仕分け作業・物流センターにおける流通加工など、商品の入出荷にかかる荷役作業料が挙げられます。
管理費用
管理費用は、物流活動を計画・実行・監視するための管理組織の運営コストのことです。
物流部門の人件費、物流管理システムの導入と維持に関する費用や通信費、管理に必要なその他のオフィス経費などが挙げられます。
物流コスト削減のためのアイデア
ルート最適化
配送ルートの最適化は、燃料消費を削減し時間を節約する最も効果的な方法です。
地理情報システム(GIS)を利用した高度なルート計画ソフトウェアもあり、システムを活用して簡単に最適なルートで走行することが可能となります。最適なルートを走行することで走行距離短縮が実現でき、燃料費を削減できます。
輸送手段の多様化
海上輸送や鉄道輸送など、比較的低コストの輸送手段を活用することも長距離輸送においては大変有効な手段となります。海上輸送では、内航船舶1隻で10トントラック160台分、鉄道輸送であれば、最大で大型トラック65台分の貨物を1度で運ぶことが可能です。長距離輸送においてはトラック以外の手段を検討するなど、従来とは異なる輸送手段を活用することも良いでしょう。
参考:鉄道コンテナ輸送が選ばれる理由 -全国通運連盟
海運モーダルシフトの現状について -国土交通省
拠点の集約
物流拠点を集約することで、人材や設備にかかるコストが少なくなり、併せて拠点ごとの煩雑な在庫管理の負担を軽減することができます。
ただし、トラブルの際のリスク分散が困難になるため注意が必要です。
アウトソーシングを利用する
専門のサードパーティ・ロジスティクスプロバイダー(3PL)に委託することも物流コスト削減に寄与します。3PLとは、物流業務全般を代行し高度な物流サービスを提供する事業者のことです。委託することでクライアントは経営資源をより必要な部門に回すことが可能となり経営効率の向上や物流コストの最適化が見込めます。
物流コスト削減事例
弊社が提供している自動配車システム「Loogia」を活用したコスト削減事例をご紹介します。
タカナシ販売株式会社様
ルートの見直しや、業務改善ができる仕組みづくりを行ったことでコストを削減しました。配送ルートの作成をベテランの知識や経験に依存していた状況から、「Loogia」を導入したことにより配送ルートが明確化し、複数の人間が同じ認識で業務に取り組めるようになりました。
詳細はこちらから
Loogia導入事例 タカナシ販売様
前田鐵鋼株式会社様
月280時間の労働時間削減により主に人的コストを削減しました。
依頼時間までに納品を仕切れず時間外労働が多いという課題がありましたが「Loogia」を導入したことにより配車業務、配送業務の時間削減を実現することで大幅な労働時間の削減に成功しました。
詳細はこちらから
Loogia 導入事例 前田鉄鋼様
東海コープ事業連合様
個人宅配達とグループ配達あわせて、22コース/配達先908箇所における配達コースや配達時間、走行距離の削減によってコストを削減しました。組合員の増減に応じて手作業でコースの改変を行なっていましたが、「Loogia」を用いた実証実験の結果、配達コース13.6%、総配達時間 15%、総走行距離 9.7%の削減を実現しました。
詳細はこちらから
Loogia 導入事例 東海コープ事業連合様
まとめ
物流コストが増加する要因や削減するための方法、削減に成功した事例をご紹介しました。なにより大切なことは現状、どこにコストが掛かっているのかを可視化することです。ぜひ本記事で紹介したポイントを参考に自社の物流コストを分析してみてください。
Loogiaは、毎日の配送ルート作成だけでなく、固定的なルートの事業者様向けに現在の物流見直し短期シミュレーションなど提供しており、自社の状況に合わせた活用が可能です。最適な配送ルート実現によるコスト削減事例も多数あります。
他にも各業種に合った幅広い活用方法がありますので、ぜひ気軽にお問合せください!