
2025年7月、国土交通省 近畿運輸局 大阪運輸支局でトラック・物流Gメンを務める大阪運輸支局輸送部門 首席運輸企画専門官 桒原 岳志様、運輸企画専門官 田中 滉久様、草田 理沙様をお招きし、2024年問題の概況やトラック法の改正、集中監視月間の報告も含めたこれまでの活動内容についてご解説いただくオンラインセミナーを開催いたしました。
当記事では、運輸企画専門官 草田様よりご解説いただいた、セミナー第一部「実例で知る!トラック・物流Gメンの取り組みとGメン情報活用法」の後半パート、そして第三部の質疑応答から主要なポイントを抜粋してご紹介いたします。セミナーにご参加いただけなかった方も概要をご覧いただける内容となっております。
本セミナーの前半パートも下記に掲載しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
https://loogia.jp/column/eventreport14/
第一部 「実例で知る!トラック・物流Gメンの取り組みとGメン情報活用法」<後半パート>
トラック・物流Gメンの取組について
Gメンとして活動をしてみて

トラック・物流Gメンの活動を行う中で「相談したいが、どのような情報を提供すればよいのかわからない」というお声をいただくことがあります。そこで、私たちがプッシュ型情報収集において伺っている内容を上図にまとめました。
まずは、荷主・元請事業者の正確な事業者名を伺います。特に大規模な企業の場合には、グループ会社や類似名称の事業者が複数存在することもあるため、住所などの情報も含めて、対象を正確に特定できるよう丁寧に確認を行っていきます。また、一対一の契約関係でないことも多い業界ですので、契約関係についても詳しく伺います。
その上で、例えば「恒常的な長時間の荷待ち」にお困りの場合には、荷待ちの時間や頻度、発生場所を伺うとともに、長時間の荷待ちが荷主の都合によるものであることが前提となりますので、荷主からの到着時間の指定の有無などについてもあわせて確認させていただきます。また、物流の2024年問題以降、予約システムを導入している事業者様も多い印象があります。そのため、予約システムの導入状況や、導入している場合にはそれでもなお十分に機能していない理由についても、詳しくお話を伺うことがあります。
こうした内容を含め、上図に挙げた項目は私たちが最低限お聞きしたい情報です。
なお、「契約にない附帯業務」に関するご相談では、契約書をご提供いただくことで事実関係を的確に把握することができ、より円滑に対応を進められる場合もあります。ただし、こうしたケースでは、契約書に附帯業務が記載されているものの、その範囲について双方の認識に相違があることが原因となっている場合もあります。そのため、どの違反原因行為についてもいえることですが、まずはできる限りご自身で荷主や元請事業者と交渉・相談を行い、それでも改善されない、または話し合いに応じてもらえない場合に、トラック・物流Gメンをご活用いただければと考えております。

また、ご注意いただきたいのが、ご提供いただいた情報の全てが是正指導につながるわけではないということです。いただいた情報につきましては、こちらで精査した上で「働きかけ」や「要請」等の是正指導につながるか判断しております。違反原因行為の経過を把握するために、追加でより詳細な情報を伺う場合やパトロール時に現地調査を行うなど他の手法による対応を行う場合もあります。
くわえて、皆様気になるところではあるかと思いますが、現制度上ではご提供いただいた情報の利用方法や指導の有無については、情報提供者であってもお伝えすることができません。また、こちらから情報提供者の特定につながるような情報をお伝えするようなことは決してありませんが、契約の関係やタイミングにより推察される可能性はゼロではありません。そのため、是正指導による情報提供者の特定を極力避けたい場合には、違反が疑われる荷主や元請事業者を含むエリアを選定し、荷主等パトロールで対応することもあります。

次に、下請法の改正についてご説明いたします。
2025年5月16日に下請法の改正が公布され、2026年1月1日より一部を除き施行される予定です。法律名も「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」へと変更され、それにあわせて「下請事業者」は「中小受託事業者」、「親事業者」は「委託事業者」へと呼称が改められます。
また、下請事業者が親事業者の違反行為を関係省庁に通報したことを理由に、親事業者がその下請事業者に対して取引数量の削減や取引停止等の不利益な取り扱いを行うことを「報復措置」といいます。現在の下請法では、例えば運送会社である下請事業者が親事業者の下請法違反行為を事業所管省庁である国土交通省に通報した場合でも、報復措置の禁止対象とはされておらず、国土交通省には指導・助言の権限はありません。しかし今回の法改正により、従来の公正取引委員会及び中小企業庁に加え、国土交通省にも指導・助言を行う権限が新たに付与されることとなりました。今回の法改正を通じて、不適切な取引に関する申告がよりしやすくなる環境が、今後整えられていくものとみられています。

こちらは、パトロールの際にトラック事業者様からいただいたお声を載せたものです。
まず、予約システムの使用に関しては「使用方法に慣れるまでが大変で、仕事が増えている」とのお声や「予約システムを導入したことに満足している企業が多く、根本的な荷待ちの解消につながっていない」といったご意見が多く寄せられています。また、「そもそも予約枠が少なく、希望する時間に予約が取れない」といったご指摘も少なくありません。こうした状況を踏まえると、「予約システムをどのように運用するのか」が現在の課題となっている荷主様も多いものと考えられます。
一方で、運賃交渉に関しては「荷主側から積極的に交渉の場を設けてもらえるようになった」というような嬉しいお声もいただいております。
ほかにも、「積込み・荷卸しなど附帯作業は、トラックドライバーがサービスで行うのが当たり前という商慣行になっている」というご指摘や「運賃と料金の別建てについて運輸局がもっと周知すべき」、「国土交通省が発出した異常気象時の措置の目安について、荷主に周知してほしい」というような私たち国土交通省へのご要望も伺っております。

続いては、発荷主様からいただいたお声となります。こちらの内容から、問題解決に向けてさまざまな取り組みが進められている様子が見受けられます。
しかし、一方で「入出庫依頼に含まれていない下請のトラックが来所することで、受付照合待ちの時間が発生し、結果として待機時間が発生することがある」といったご意見もあり、待機時間の発生にはさまざまな背景や要因があることがうかがえます。こうした点については、トラック事業者様との連携や協力が必要な部分もあるのではないかと思われます。

3つ目は、物流事業者様・倉庫業者様からのお声となります。
「物流施設での荷待ち時間の改善には、受発注時間の前倒しとそのルールの徹底が必要ではないか。ただ、緊急の納品への対応などサービスレベルが低下するおそれもあるため、着荷主や消費者の理解が得られるかが鍵になると思う」といったご意見をいただいております。確かに、リードタイムを延ばすことによって、結果として消費者の手元に届くまでの時間が長くなる可能性もあります。こうした点も踏まえ、近畿運輸局では消費者の理解を得るため、消費生活センターなどで講座を開催しています。

4つ目は、物流事業者様・トラック事業者様双方からいただいたお声で、「外装ダメージ品確認のため、待機時間が発生する場合がある」、「全日本トラック協会の出している梱包のリーフレットがわかりやすい」、「荷物の種類によっては、外装ダメージ品の条件緩和の議論があっても良いのではないか」といったご意見をいただいております。


上図に、トラック・物流Gメンによる「働きかけ」「要請」等の是正指導を契機に、改善が行われた事例を載せております。
その他の事例につきましても、国土交通省HPにてご確認いただけますので、こちらのリンクからぜひご覧ください。
国土交通省HP 「トラック・物流Gメンについて」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000116.html

ここからは、トラック・物流Gメン活動で感じた問題点についてお伝えします。
1つ目は、運賃・料金などの不当な据え置きを受けたとの情報をいただいたケースです。運送会社様からは「運賃の原価計算資料を基に値上げの交渉を申し込んだが、荷主から『こちらが出せるのはここまで』と言われ、一方的に交渉を打ち切られた」とお話を伺いました。一方で、荷主様からは「運賃交渉には応じたし、実際に値上げも行った」との説明がありました。このように、荷主様側は「交渉に応じた」と考えている一方で、運送会社様側は「一方的に打ち切られた」と感じており、双方の認識に大きな齟齬が生じていることがわかります。これは、交渉の過程において十分なコミュニケーションが取られなかったことが一因であると思われます。

2つ目は、契約にない附帯作業をさせられているとの情報をいただいたケースです。こちらのケースでは、契約書に附帯作業に関する記載はあるものの、作業範囲が明確に定められておらず、契約締結時にもその点について十分な話し合いが行われていませんでした。
そのため、荷主様側は積み降ろし作業の中に倉庫内での整理作業も含まれると認識されていましたが、運送会社様側は契約書に明記されていない作業を求められていると受け止められており、双方の認識に齟齬が生じていました。こちらも、どこまでを作業範囲とするかについての事前協議が行われておらず、コミュニケーション不足により認識のズレが生じたケースです。

このような認識の齟齬が発生しないようにするためには、まず荷主様と運送会社様との間で定期的なコミュニケーションの場を設けることが必要です。運送会社様や下請会社様の中には「仕事をいただいている立場である」との意識から、ご自身の要望を伝えることをためらう方も少なくありません。そのため、「困り事がないか」「運賃は適正か」といった点について、荷主様側から積極的にお声掛けいただくことが重要となります。
また、多重下請け構造により、情報がうまく伝わらず問題が発生するケースもあります。そうした事態を避けるためには、先程もご説明したように、改正トラック法でいうところの健全化措置として「二以上の段階にわたる委託を制限する」というような条件を契約に付すことも効果的です。
荷主様にとっても製品の運送が滞ると事業に支障をきたす可能性があるかと思いますので、双方が対等な立場で適正な取引を行えるよう、ご配慮いただければと思います。
なお、国土交通省のHPでは取引行為や価格交渉のノウハウをまとめたハンドブックも掲載しておりますので、トラック運送事業者の皆様もぜひご活用ください。
その他(参考資料など)

最後に、参考資料をいくつかご紹介いたします。
こちらは、新物流効率化法に関する情報を詳しく載せているポータルサイトです。参考資料も多数掲載されており、来年度からの改正情報についても順次公開される予定ですので、ぜひご活用ください。
「物流効率化法」理解促進ポータルサイト:http://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
また、ポータルサイト内では荷主様の先進的な取り組み事例なども掲載しておりますので、そちらもぜひご覧ください。
「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「荷主(第一種・第二種)の判断基準等」:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/sippers/judgment-criteria/

経済産業省 中小企業庁が運営する「適正取引支援サイト」では、価格交渉に関する講習会の案内なども掲載されております。
適正取引支援サイト:https://tekitorisupport.go.jp/

近畿運輸局HPでは、物流の2024年問題対策リンク集を掲載しております。上図の赤い枠内、下から2つ目には「各種補助金メニュー」へのリンクも設けておりますので、特に近畿管内の事業者様におかれましてはぜひご確認いただければと思います。近畿運輸局HP:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/index.html

こちらは資料のご紹介のみとなりますが、物流事業者様におけるデジタル化の取り組みやデジタルツールの導入事例、業界内のニーズやDX導入に際しての課題などについて国土交通省が調査し、取りまとめた資料です。今後のご参考として、ぜひご活用いただければと思います。
中小物流事業者における物流業務のデジタル化実証:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000255.html
中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000234.html
物流・配送会社のための物流DX導入事例集 ~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000233.html

また、上図は過去の案内となりますが、国土交通省トラック・物流荷主特別対策室では物流の2024年問題に関する情報提供の場として、毎月1回オンライン説明会を開催しております。物流施策の説明や最近のトピックス、トラック・物流Gメンの活動内容などについてお伝えしておりますので、こちらもぜひご参加ください。
国土交通省トラック・物流荷主特別対策室主催 トラック物流問題解決に向けたオンライン説明会:https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/00001_01682.html
第三部 質疑応答
Q1:どこまでを附帯作業とするのか見解を教えてください
A1:附帯作業につきましては標準貨物自動車運送約款にも記載がありますが、基本的には「車上受け・車上渡し」が原則とされており、それ以外は附帯作業とみなされます。例えば、代金の取り立てや貨物の荷作り、検品やラベル貼りなど、運送に付随して一定の時間を要する作業や技能・機器を必要とする業務も附帯作業に該当します。
ただし、こうした附帯作業については、書面で交付された契約書の中で作業内容やそれに伴う料金について明確に記載され、双方の合意がなされており、対価が適切に支払われている場合には、特に問題となることはありません。実際、契約書に附帯作業の記載があるかどうかという点は、トラック・物流Gメンの対応にも影響を及ぼす重要な要素となります。
ご注意いただきたい点は、先ほどもご説明したとおり、契約書に記載がある場合でも作業内容に関して当事者間で認識に齟齬が生じるケースがあるということです。こうした事態を防ぐためには当事者同士が丁寧に話し合い、日頃からのコミュニケーションを大切にしていただくことが重要となります。
また、着荷主様側で附帯作業が発生している場合には、発荷主様から交渉や調整を行っていただく場合もあるかと思いますので、その際はご協力のほどよろしくお願いいたします。
Q2:断続的な値上げ依頼を受けており、根拠が示せない業者の方が多い印象で困っています
A2:社会全体として物価の上昇が続いていますので、荷主様も「原資がなく、値上げに応じられない」といった事情を抱えておられる場合もあるかと思います。そのような厳しい状況の中でも、何とか値上げ交渉に応じようとご尽力いただいている荷主様も多く見受けられます。
私たちトラック・物流Gメンも、単に「値上げをしてください」というのではなく、きちんと原価計算を行い、自社の現状を把握した上で根拠となる資料を用意して交渉に臨んでいただくことが重要だと運送会社様に呼びかけています。
また、全日本トラック協会様も原価計算のセミナー開催や支援サイトの運営などをされていますので、ぜひそちらも活用いただきながら適切な価格交渉に取り組んでいただければと思います。
Q3:運送会社として、荷主とコミュニケーションが取りづらいと感じることがありますが、円滑にやり取りを行う方法はありますか
A3:日頃から円滑に情報共有を行えるよう、数ヶ月に1回、最低でも年に1回程度は定期的なコミュニケーションの場を設けることが重要です。またその際に、運賃の交渉など切り出しにくいテーマについて話す場合には、ただ一方的にお願いするのではなく、代替案や改善策もあわせて提示するようにしましょう。
実際に、ドライバー確保のために人件費が増加し、経営が厳しさを増していた運送会社様では、今後ドライバー不足により納品の遅延が発生するリスクがあることを丁寧に説明するとともに、値上げ幅を抑える代替案として配送の曜日調整やルートの再構築による最適化を提案されました。その結果、荷主様側にも「コストの安さばかりを追求すれば、安定した供給体制が損なわれる」というリスクを理解していただくことができ、運賃の見直しが実現したという事例もあります。
繰り返しになりますが、運送会社様は「仕事をいただく」という立場ではなく、荷主様と対等な関係にあるパートナーです。「貴社と長くお付き合いし、持続可能な物流体制を共に構築していきたい」というスタンスで対話を積み重ねていくことが重要だと考えます。
Q4: 荷待ち時間や荷積み時間の削減が進まないのですが、削減に成功している他社の具体的な事例などはありますか
A4:一口に荷待ち時間や荷積み時間の削減といいましても、その原因は事業者様ごとにさまざまであると考えられます。そのため、まずは自社の現状を的確に把握・分析し、原因を明確にした上で対応策を検討することが重要です。
実際に、私たちがパトロールの際に伺う取り組みとしては、まずは受付システムを導入して入出庫にかかる時間やその要因を把握し、その後予約システムを導入するなど段階的に改善を進めている事業者様が多い印象です。しかし、システムを導入するだけでは改善は完結しません。運送会社様や現場で対応されるドライバーの方々に運用内容の変更を丁寧に周知することが重要であり、そうした配慮がより効果的な改善につながると考えています。
Q5:業界では人手不足を嘆く声も多いですが、これについてトラック・物流Gメンの皆様が感じることはありますか
A5:人手不足については、どの事業者様を訪問しても頻繁に耳にするご意見であり、非常に切実な課題であると私たちも強く感じています。私たちトラック・物流Gメンの役割の一つはドライバーの待遇を改善し、担い手を増やすことにありますので、そのためにも運送の対価を正当に確保できる環境を整えていきたいと考えています。
ただ、日本全体が人口減少社会にある中で、労働力の不足や低下は避けられないというのも現実です。こうした中で輸送力を維持していくためには、技術革新や生産性の向上、業務効率化に向けた取り組みをあわせて進めていく必要があります。そのためにも、荷主様と運送会社様が連携しコミュニケーションを密に図っていくことが重要だと考えています。現場の声に耳を傾け、伸びしろを見つけていく姿勢をぜひ意識していただければと思います。
Q6:最後に、運輸企画専門官 田中様からコメントをお願いいたします
A6:本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
繰り返しになりますが、私たちトラック・物流Gメンもドライバーの担い手不足によって物流が滞ることに強い危機感を抱いております。物流は国民生活・経済活動の基盤であり、欠かすことのできない重要な存在です。そのため、この基盤が揺らぐことのないよう、ドライバーの皆様の経済的・社会的地位の向上を目指すとともに、トラック運送業界全体の質の向上が非常に重要だと考えております。
私たちもできる限り尽力してまいりますので、皆様のご協力を賜りますよう、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
さいごに
当記事では、セミナー第一部「実例で知る!トラック・物流Gメンの取り組みとGメン情報活用法」の後半パート、そして第三部の質疑応答から主要なポイントを抜粋してご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
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