
2025年4月22日、弊社プロダクトマネージャーのウィスロー妙子による「物流データ活用セミナー」が開催されました。
本セミナーでは、物流業務の全体像から、輸配送領域における課題、そしてLoogiaを活用したデータドリブンな改善手法が紹介されました。以下、当日の講演内容をレポート形式でお届けします。
物流業務の全体像とシステム活用の重要性

物流業務は「出荷前の準備作業」と「配送・納品作業」の大きく2つに分けられます。
出荷前の準備作業では、在庫確認・ピッキング・ラベリング・検品などの工程があり、正確性が求められます。そして、配送・納品作業では納品先の受け入れ体制に合わせた対応や駐車場所の確保、清掃・返品・パレット回収などの様々な付帯作業が発生します。
このように、物流は単にモノを運ぶだけでなく、複雑な工程が互いに連携しながら進められています。これらを正確かつ効率的に回すには、倉庫管理システム(WMS)や輸配送管理システム(TMS)など、システムによるサポートが必要不可欠です。
輸配送業務の中核を担う配車業務の重要性

輸配送領域の中核を担うのが「配車業務」です。
誰が、どの車両で、どのルートで、どの順序で配送するかを決める配車業務は、非常に多くの判断と制約が絡みます。
これはドライバーの拘束時間や車両サイズ、荷物の積載可能量、納品時間帯、利益の確保など、考慮すべき要素が多岐にわたるためです。
したがって配車とは単なるスケジュール作成ではなく、これらの制約を考慮し、限られたリソースで最大の成果を上げる意思決定業務と言えます。
現場でよくある課題とデータ活用の意義

配送現場でよく挙げられる課題として下記のようなものがあります。
- 現場にどの程度の改善余地があるか把握できない
- 訪問頻度や滞在時間が見えず、キャパシティが読めない
- 配送品質や生産性の指標が確認できず、改善が後回しになっている
これらの課題に対し、Loogiaでは「データを起点とした改善アプローチ」を提供しています。
まずは配送実績データをもとに、現場で何が起きているのかを可視化し、時間のロスや非効率なルートなど、ボトルネックの所在を明らかにします。
次に、配車シミュレーションを用いることで、現場のキャパシティを定量的に把握できるようになります。たとえば「あと何件配送できるのか」「この条件なら何台で回せるか」といった潜在的な配送力を数値で捉えることが可能です。
さらに、こうして得られたデータに基づいて、契約条件や配送条件の見直しを行う環境を整えることで、持続的な改善活動が促進されます。
改善の過程では、無理のない効率的なルート設計が重要となりますが、データを用いることで、現実に即した精度の高いルートを作成し、全体最適な配送を実現します。
そして最終的には、荷主・配送会社・ドライバーといった関係者が、現場の声とデータの両面から建設的な対話を行える環境を整えます。
こうしたデータを活用した取り組みにより、収益性の向上や持続可能なオペレーションの構築、さらには労働環境の改善といった成果を期待できます。
データを用いて全体最適を目指す

物流業務を取り巻く環境は、発荷主・着荷主・元請の物流企業(3PL)・実務を担う運送会社など、さまざまな関係者により構成されています。
このような環境下で、それぞれの立場における“最適”は必ずしも一致するとは限りません。
一方の効率化が、他方にはコストや負荷となって現れるというジレンマが物流現場では多く見られます。
だからこそ重要なのは、共通言語としての「データ」を用いて、関係者間の視点をつなぎ、客観的に現状を把握しながら全体最適を志向することです。
Loogiaを用いた4つのデータ活用手法
物流における改善は、配送条件の見直しや生産性の向上、協力会社とのコミュニケーション改善、運行効率や配送品質の向上など、さまざまな観点から行われます。これらの改善を積み重ねていくことで、より多くのモノを持続可能に届ける体制が築かれ、最終的には収益性や売上の向上にもつながります。
ここからは物流の改善に向けて、Loogiaを用いた具体的なデータ活用手法を4つご紹介します。
1. 現場のパフォーマンス可視化と改善余地の把握

物流業務の改善テーマは多岐にわたります。自社車両か外部委託か、ドライバーのスキルや経験値、作業時間や日時指定等の配送条件、遅延・破損の有無や積載効率、そして収益性まで、多角的に把握する必要があります。
Loogiaでは現場の業務データを収集・可視化するために、ドライバー専用のアプリを提供しており、これを通じて収集したデータをもとに、様々な指標に基づいて現場のパフォーマンスを定量的に把握できる環境を提供します。
具体的には下記のような改善に役立てられます。
車両利用の効率化
「実車時間(荷物を運んだ時間)」と「空車時間(荷物を運んでいない移動時間)」のデータを可視化でき、どの車両が効率よく使われているか、逆に稼働にムラがある車両はどれか、といった情報を分析することができます。
積載効率の向上

1日の積載荷量、平均積載率、ピーク積載率などを時間軸に沿って分析することで、繁忙時間帯の積載効率やムダの有無を見極めることができます。実際に業務が集中している時間帯にどれだけ効率的な運用ができているかを可視化することで、配車計画の最適化やリソース配分の見直しに役立ちます。
遅延の改善

各納品先への到着時刻が指定時間内であったか否かを色分けすることで、どの地点で遅れが発生しているかを可視化できます。
さらに、遅配した納品先情報とドライバー情報の紐付きを確認できるため、改善すべきポイントを具体的に掘り下げることが可能です。
ドライバーの業務効率化

ドライバーが訪問先に滞在していた時間を、作業時間と待機時間に分けて可視化できます。たとえば、ある訪問先で滞在時間が長かった場合、その内訳が「作業が長引いた」のか「受け入れ待機で時間がかかった」のかを区別して分析できます。
これにより、運行のどの部分がボトルネックになっているかを特定し、滞在時間を削減できる余地が明確になります。
2. 高精度なコース・ルート作り

Loogiaが提供する配車計画機能では、国内最高水準の最適化アルゴリズムに加え、ドライバーアプリを通じて収集された実際の走行データや現場での運用実績データなどをもとに、移動時間の予測精度を高める仕組みが用意されています。
たとえば、ある地点AからBまでの移動時間が、システム上では15分とされていた場合でも、実際には周辺道路の渋滞や信号のタイミングなどによって20分近くかかっているかもしれません。そうした実際の履歴を学習し、配車計画に反映します。
これにより、時間指定の厳しい配送先にも無理のないスケジュールで到着でき、ドライバーに余計なプレッシャーをかけることなく、業務の安全性・確実性が向上します。
配車計画を精緻にするうえで、もうひとつ重要な要素が「滞在時間」の見積もりです。
Loogiaでは、過去の配送実績をもとに、各訪問先での滞在時間を自動的に推定する機能を備えています。

地点ごとに「標準」「短め」「ゆとりあり」といった選択肢で滞在時間を提示することも可能です。熟練ドライバーのルートでは「短め」を選択し、新人や安全運転を優先したいケースでは「ゆとりあり」を選ぶなど、配送現場の実情やドライバーの特性に応じて柔軟な計画を立てることができます。
3. リソース最適配備による配送能力の最大化

Loogiaでは、キャパシティシミュレーション機能を活用し、人的・物理的なリソースの配備状況を最適化する仕組みを提供しています。
シミュレーションでは、配備可能なドライバー数、拘束時間、注文量や時間指定、作業時間、車両のサイズや台数など複数のパラメータを自由に調整できます。
これらの条件を変化させながら、業務をどのように回すのが最も効率的かを複数パターンでシミュレーションすることが可能です。
これにより得られたデータは戦略的なリソース調整や運用改善に役立てることができます。
4. コストを抑えたコース・ルート作り

配送コストを最小化するコース・ルートを作成可能にする新機能をリリース予定です。
本機能では車両費や人件費、高速道路利用料などを加味したルート別の配送コストを算出し、よりコスト効率の高いルート作成を可能にします。残業コストと車両の追加コストを比較してどちらが最適かの判断を自動で行なったり、高速道路利用料金と時間短縮の効果を比較分析してコストと効率の両面から最適なルートを作成可能です。
またルートごとに採算性スコアを算出し、非効率な区間を特定して見直すこともできるようになります。
データ活用における現場の壁とLoogiaのアプローチ

実際にデータを活用して業務改善に取り組もうとすると、現場ではさまざまな壁に直面します。
たとえば、「そもそもデータを取り出せない」「データの意味が不明瞭」「システムごとに定義が違っていて比較が難しい」といった課題です。また、データの整形や分析基盤の構築に時間と費用がかかり、改善が進まないケースも多くあります。
Loogiaでは、こうしたハードルを乗り越えるため、分析に必要なデータを開発不要で取得・整備できる仕組みを提供しています。ドライバーアプリによる自動収集や、クレンジング済みの状態での可視化など、現場負荷を最小限に抑えながら、すぐにデータ分析・改善に着手できる環境を整えています。
現場視点×データ分析が生む、持続可能な物流

物流業務は、品質・効率・収益といった複数の視点を同時に成立させる必要があり、非常に高度なバランスが求められます。だからこそ、データ分析においては「数値を読むだけ」ではなく、その背後にある現場の状況や文脈を理解しながら進めることが何より重要です。
何を目指すのか、そのために本当に必要なデータは何かを見極め、数値と現場での実態の両方に目を向けて改善に取り組むことで、初めて本質的な成果に結びついていきます。
Loogiaは、「現場で本当に使えること」を最も大切にしたプロダクトです。単なるツールの提供にとどまらず、データ分析支援や物流全体のコンサルティングまで含めたトータルサポートを提供しています。
データを活用し共通の指標を持ちながら、現場・経営・協力会社の間での建設的な対話を促進することで、”持続可能な強い物流”を実現します。
さいごに
本記事では、弊社プロダクトマネージャーのウィスロー妙子による「物流データ活用セミナー」にて紹介された物流業務の全体像から、輸配送領域における課題、そしてLoogiaを活用したデータドリブンな改善手法をご紹介しました。
Loogiaを用いたデータ活用に興味をお持ちの方はぜひ下記より詳細をご覧ください。