【セミナーレポート】トラックGメンに聞く「物流革新に向けた政策パッケージ“商慣行の見直し”」と 2024年問題の解決に向けた活動状況

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2024年11月、国土交通省 近畿運輸局 大阪運輸支局でトラックGメンを務める大阪運輸支局輸送部門 首席運輸企画専門官 中村洋一様、運輸企画専門官 稲住直樹様、石松佑理様をお招きし、トラックGメン発足の経緯や背景、活動内容やこれまで近畿圏を中心に実施されてきた施策の実例などについてご紹介いただくオンラインセミナーを開催いたしました。

当記事では、セミナー第一部の「トラックGメンの取り組み:『物流革新に向けた政策パッケージ“商慣行の見直し”』」について主要なポイントに絞ってご紹介いたします。セミナーにご参加いただけなかった方も概要をご覧いただける内容となっております。

第一部 トラックGメンの取り組み:「物流革新に向けた政策パッケージ“商慣行の見直し”」

トラックGメンの概要と発足の経緯

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トラックGメンは、物流の2024年問題を解決するために国土交通省に新たに設置された部署です。私たちトラックGメンはトラック運送事業者を取り締まる存在ではなく、監査業務とも別のものです。トラックGメンには大きく分けて2つの業務があり、1つ目はトラック事業者を対象とした積極的な情報収集、いわゆるプッシュ型情報収集であり、2つ目は貨物自動車運送事業法に基づき、発荷主・着荷主・元請事業者に対して「働きかけ」や「要請」等を行うというものです。

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トラックGメンは令和5年7月21日に創設されました。

トラックGメンの設置により、トラック事業者への情報収集力の強化やトラック法に基づく「働きかけ」「要請」「勧告・公表」制度の執行力強化など、荷主等への監視体制の強化を図っています。

「トラック・物流Gメン」への改組と体制の拡充

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情報収集機能を強化し物流全体の適正化を図るため、2024年11月から「トラックGメン」は「トラック・物流Gメン」に改組し、体制を拡充することとなりました。具体的には「トラック・物流Gメン」への名称変更に伴い、違反原因行為を行っている疑いのある荷主等の情報収集を倉庫業者からも行います。また、体制の拡充については、現行162名に、地方運輸局等の物流担当職員29名と各都道府県のトラック協会が新たに設ける「Gメン調査員」166名を追加し、総勢360名規模で対応を行います。あわせて、倉庫業の業界団体に情報収集窓口を設置し、地方運輸局等と連携して情報収集を行います。

トラックGメンの活動内容と事例

プッシュ型情報収集とは

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トラックGメンの主な業務である「プッシュ型情報収集」では、トラック事業者に対する訪問調査や電話聴取などの手法で、違反原因行為に関する積極的な情報収集を行います。また、情報提供のあった違反原因行為の疑いのある荷主の支店や荷捌き場周辺などへのパトロールや、荷主の違反原因行為情報を投稿したトラック事業者へのフォローアップ調査を行います。例えば、情報提供者への事実確認や詳細な調査を行ったり、「働きかけ」「要請」実施済みの荷主等に対して、再度違反原因行為が発生していないかなどの確認を行っています。また、トラックドライバーへの周知活動として、近畿管内のトラックステーションや高速道路のSA・PAにおいて、ドライバーに対し「トラック・物流Gメン」制度についての周知活動を行うとともに違反原因行為についてのヒアリングなども実施しております。

違反原因行為とは

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トラックGメンは、違反原因行為を行っている疑いのある荷主等の情報を積極的に収集しています。違反原因行為とはトラック事業者の法令違反の原因となるおそれのある荷主の行為を指し、代表的な例としては、過労運転防止義務違反を招くおそれのある長時間の荷待ちや、契約にない附帯業務の依頼、適正取引における運賃・料金等の不当な据え置きなどが挙げられます。その他、無理な到着時間の設定や過積載となるような依頼、大型台風や豪雨・豪雪などの異常気象時における運行指示なども違反原因行為となります。

違反原因行為に関する情報の事例

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上図では、違反原因行為として寄せられた情報の一部を記載しております。

特にご相談や情報提供が多いのは「長時間の荷待ち」に関するものです。荷待ちが発生する要因はさまざまですが、特定の時間帯に車両が集中してしまうことや倉庫やセンターで取り扱う車両数が多すぎることなどが挙げられています。

次に多いのは「運賃・料金の不当な据置」に関するものです。記載している内容のほかにも荷待ち・荷役の費用や高速料金を負担してもらえないといった情報もいただいております。

是正指導(「働きかけ」「要請」等)について

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「働きかけ」「要請」といった是正指導に関しては、プッシュ型情報収集によって得られた情報や、悪質な荷主等に関する通報窓口の「目安箱」に寄せられた情報をもとに実施しております。具体的には、違反原因行為の疑いのある荷主に対しては、トラック事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要であるということを理解してもらうよう求める「働きかけ」を実施しています。また、荷主が違反原因行為を行っていると疑うに足りる相当な理由がある場合には「要請」や「勧告・公表」を行います。

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令和6年9月30日現在のトラック・物流Gメンの活動実績は「勧告」が2件、「要請」が175件、「働きかけ」が914件と計1091件の法的措置を実施しております。上図のグラフをご覧いただくと、トラックGメン発足前と比較して、是正指導の実施件数が大幅に増加していることがわかります。

もとより是正指導を行って終わりということではなく、「要請」等の対象となった荷主に対してはフォローアップを継続し、改善が図られない場合にはさらなる法的措置の実施も含め厳正に対処しております。

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上図では、トラックGメンの是正指導により改善が行われた事例を挙げております。

今回は事例の詳細な説明は割愛させていただきますが、国土交通省HPから他の事例もご確認いただけますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。
国土交通省 「『トラック・物流Gメン』について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000116.html

荷主等パトロールについて

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近畿運輸局では「荷主等パトロール」という周知活動を通じて積極的に現場の状況確認を行っており、大阪運輸支局でもトラックGメンの活動の一環として特に力を入れております。 

荷主等パトロールとは、物流の2024年問題に対する荷主への広報啓発活動のことを指し、長時間の荷待ち等の情報提供があった物流施設だけでなく、周辺の物流施設も含め、基本的には事前のアポイントなしで訪問し、現場の状況確認を行います。荷主等パトロールではエリアを選定し、必ず複数の施設を回るようにしています。これは、情報提供者の特定を懸念するトラック事業者もいることから、たとえ周知活動であっても、特定の1社だけを訪問することは避けるようにしているためです。

パトロールの実施状況としては、令和5年11月から始まり令和6年11月8日までに965か所を訪問しております。

パトロールでは、荷主向けの説明チラシの配布やオンライン説明会の案内、物流の2024年問題やトラックGメン制度などを周知しています。また、近隣にトラック事業者の事務所がある場合には情報提供の呼びかけなども併せて実施しています。  

プッシュ型情報収集や目安箱を通じて寄せられた情報の中には、連絡先が不明なものなど是正指導に結びつけるのが難しい曖昧な情報も含まれますが、ご提供いただいた情報を有効に活用するため、パトロールの訪問先選定に活かしております。

荷主等パトロールにおける具体的な説明内容

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荷主等パトロールの際に行う説明の内容について具体的にご紹介いたします。

まず「物流の2024年問題」に関しては、「本質的な課題としてトラックドライバーの労働環境を改善しなければ、将来的に担い手が不足するおそれがある」、そして「このままでは、トラックがあったとしてもドライバー不足でモノを運べないという事態に陥る可能性がある」ということをご説明し、長時間労働の是正や適正な運賃収受など取引環境の適正化に向けたご協力を荷主や元請事業者にお願いしております。時折、運送契約の当事者ではない事業者の方に「自分たちが改善する必要があるのか」といったお声をいただくこともありますが、そのような場合でも「持続可能な物流を実現するためには、特定の事業者に負担が集中する状況を解消する必要がある」ということをご説明し、根気強くご協力をお願いしております。

また、トラックGメンに関する説明としては、Gメンが積極的に情報収集を行っているということ、そして、関係機関と連携して法に基づく指導を行っているということをお伝えしています。

近畿運輸局や大阪運輸支局では、トラックGメンの役割として、さまざまな現場で起きている物流課題についてトラック事業者と荷主の双方からお話を伺い、相互理解を深めることも重要だと考えています。荷主等パトロールは1社ずつの訪問という地道な活動ではありますが、トラック事業者や荷主の皆様から実態を伺い、私たちができることを引き続き考えていきたいと思っておりますので、ご協力をよろしくお願いいたします。

荷主等パトロールでいただいたお声

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ここで、実際にパトロールを行う中で皆様からいただいたご意見を少しご紹介したいと思います。

まず、トラック事業者からは「積み込み作業などに関してトラックドライバーがやるのが当たり前という商慣習が根付いているため、運賃と料金の別建てについて運輸局がしっかりと周知してほしい」といったお声をいただいております。また、「国土交通省が発出した異常気象時の措置の目安について、荷主企業側にも周知してほしい」といったご要望をいただいております。

一方で、発荷主からは「入出庫依頼にない下請けのトラックが来所することで、受付照合待ちの時間が発生し、結果として待機時間が生じることがある」といったご意見をいただいております。待機時間の発生にはさまざまな背景や要因が考えられますが、関係者皆様のご協力や連携が必要となる場合もあるかと思います。

2024年4月以降の状況について

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2024年4月以降の状況につきまして、トラックGメンによる情報収集や荷主等パトロールといった周知活動を通じて大阪運輸支局に寄せられたご意見を紹介いたします。

まず、荷主企業等からは「長時間の荷待ちに関してはトラック予約システムの導入が進んでいる」といったお声をいただいております。実際にパトロールを行う中でも「この4月から導入した」「導入を具体的に検討している」といったお話を伺っています。しかしこうした中で、「では実際に長時間の荷待ちを解消するためには、予約システムをどのように運用していけば良いのか」ということが現在の課題となっているようです。

例えば私が以前担当した案件では、トラック予約システムは導入されているが、実際には時間になっても前の荷積み・荷降ろしが終わっておらず、結局待たされているといった情報をいただき、荷主に確認を行いました。そこでお話を伺った結果、予約枠の設定時間が短く実態に合っていなかったことが原因と判明したため、設定時間を適切な時間幅にするなど改善を行いました。このように課題はあるものの、実際の現場でも荷待ち時間の短縮につながる効果的な運用を進める動きが盛んになってきていると感じています。

二つ目のトラック事業者からのお声では、「運賃交渉については話し合いの場自体は設けてもらえるようになった」といったご意見をいただいております。また、荷主側から話し合いの場を設ける動きも出てきているようです。

参考資料・オンライン説明会のご案内

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最後に、物流DXの推進というところで参考資料を少しご紹介させていただきます。

国土交通省では、物流事業者におけるデジタル化の取り組みやデジタルツールの導入事例などを取りまとめた資料を公表しております。なかでも「令和4年度 中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」はデジタル化のステップを示したページを掲載しており、「デジタル化を進めたいが何から始めれば良いかわからない」という事業者の方にもご参考にしていただける資料になっているかと思います。また、経済産業省では「荷主・物流事業者のための物流効率化に資する『物流デジタルサービス』事例集」を公表しております。物流効率化にご関心のある方に有益な内容となっておりますので、こちらもぜひご覧ください。

さらに、国土交通省トラック荷主特別対策室では「物流の2024年問題」に関する情報提供の場として毎月1回オンライン説明会を開催しております。こちらでは物流施策の説明や最近のトピックス、トラックGメンの活動内容などについてお伝えしております。説明会は荷主やトラック事業者、物流事業者の方など、どなたでもご参加いただけるものとなっており、事前登録は不要です。皆様の問題意識や質問にお答えするため事前にご意見を募集するフォームも設けておりますので、こちらもぜひご確認ください。

国土交通省「令和4年度 中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001608991.pdf

経済産業省「荷主・物流事業者のための物流効率化に資する『物流デジタルサービス』事例集」

https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/logistics.digital.service.pdf

国土交通省トラック・物流荷主特別対策室主催 トラック物流問題に関するオンライン説明会 

https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/00001_01682.html

さいごに

当記事では、大阪運輸支局輸送部門 運輸企画専門官 稲住直樹様、石松佑理様よりご解説いただきました、トラックGメンの取り組み「物流革新に向けた政策パッケージ“商慣行の見直し”」についてポイントをまとめてご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

弊社では、物流業界の方向けの情報発信をセミナー、記事などを通して行っております。下記の最新情報ページに各種お知らせやお役立ち記事を掲載しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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