
2025年7月、国土交通省 近畿運輸局 大阪運輸支局でトラック・物流Gメンを務める大阪運輸支局輸送部門 首席運輸企画専門官 桒原 岳志様、運輸企画専門官 田中 滉久様、草田 理沙様をお招きし、2024年問題の概況やトラック法の改正、集中監視月間の報告も含めたこれまでの活動内容についてご解説いただくオンラインセミナーを開催いたしました。
当記事では、首席運輸企画専門官 桒原様、運輸企画専門官 田中様より解説いただいた、セミナー第一部「実例で知る!トラック・物流Gメンの取り組みとGメン情報活用法」の前半パートから、主要なポイントを抜粋してご紹介いたします。セミナーにご参加いただけなかった方も概要をご覧いただける内容となっております。
第一部「実例で知る!トラック・物流Gメンの取り組みとGメン情報活用法」<前半パート>
トラック・物流Gメン設立の背景
物流は日本の国民生活や経済活動、地方創生を支える重要な社会インフラです。近年、物流分野では人手不足や労働生産性の低下といった課題があり、働き方改革の推進やカーボンニュートラルへの対応が求められています。こうした中で、2023年の「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」において「物流革新に向けた政策パッケージ」が取りまとめられました。これを受けて、発荷主のみならず着荷主も含め、適正な取引を阻害する疑いのある荷主や元請事業者の監視を強化するため、「トラックGメン」が設立されました。現在では「トラック・物流Gメン」として活動しており、悪質な荷主や元請事業者等に対する是正指導を行っています。私たちは、情報提供を待つだけでなく、トラック事業者へのヒアリングや電話聴取に加え、荷主や元請事業者の本社・物流拠点への訪問も行うなど、積極的な調査・対応を進めています。
一方で、2024年4月には働き方改革の一環として、トラックドライバーの労働時間上限規制が適用されました。これは、何の対策も講じなければ物流が停滞するおそれがあるという、いわゆる「2024年問題」によるもので、同年度には輸送能力が約14%不足すると試算されていました。しかし、2025年を迎えた現在もこの問題は依然として解決しておらず、2030年度には輸送能力が約34%不足するとの試算もあり、これまでと同じようにモノを運び続けることが難しくなるのではないかという懸念が高まっています。こうした課題に対応するため、昨年4月には物流改正法が、今年5月には改正下請法が、そして今年6月には改正貨物自動車運送事業法および体制整備法が成立しており、物流業界にも大きなインパクトを与えたかと思います。
今、物流業界は大きな節目を迎えており、物流事業者、荷主、そして利用者の皆様が一つのチームとなり課題解決に取り組むことが求められています。私たち行政機関だけではこれらの課題を解決することはできません。荷主や元請事業者の皆様のご協力なくしては、この問題は永遠に解決できないと考えております。
トラック・物流Gメンの取組について
トラック運送事業の概況等について

まずは、トラック運送事業の概況等についてご説明します。
トラック運送事業は国内物流の中で非常に大きなウェイトを占めており、欠かせない存在となっています。飛行機、鉄道、船舶などさまざまな輸送モードがある中で、トラックの輸送分担率はトンベースで約9割、トンキロベースで約5割となっており、その重要性は非常に高いものとなっています。
その一方で、業界の構造をみると、事業者の大半は車両数10両以下、従業員数別でみても10人以下のいわゆる中小零細規模の事業者が多くを占めており、こうした点が現在のトラック業界の特徴になっているかと思われます。

上図はトラック運送事業の働き方をめぐる現状を示したグラフです。グラフは4つありますが、どれもトラック運送事業と全産業平均を比較したものです。これらを見てみると、トラック運送事業は全産業平均と比較して、長時間労働で賃金が低く、人手不足が深刻化しており、年齢構成も高齢化が進んでいることがわかります。このような過酷な労働環境の中で、トラックドライバーの健康起因による事故発生件数も高止まりしています。

そこで、国は労働基準法に基づく時間外労働上限規制の他に、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、いわゆる「改善基準告示」を定めました。
荷主の皆様もそれぞれのお客様のご都合に応じてリードタイムを設定し、トラック事業者様に発注されているかと思います。しかし、トラック事業者様側でもこのような細かなルールを遵守しながら、日々の受注に対応しているというのが実情です。また、こうした事情を荷主様に伝えづらいと感じている事業者様も少なくありません。このような現状を荷主の皆様にもご理解いただければと思います。

時間外労働の上限規制については、トラックドライバーの方から「なぜ稼げなくなるような改正をするのか」といった厳しい反対のご意見をいただくこともあります。しかし、先ほど述べましたように、ドライバーの健康起因による事故の発生や年齢構成の高齢化といった実態を踏まえると、これまでと同じ働き方を続けていてはいずれ担い手がいなくなると懸念されます。「長く走って、たくさん稼ごう」というお考えを持つドライバーの方がいらっしゃるのも事実です。しかし、そうした声を踏まえた上で、多様な働き方を選択できる社会を実現するために時間外労働上限規制は必要な措置の一つであるという結論に至り、法律の提案理由にもその旨が記載されています。
しかしながら、ドライバーの方の働き方を変えるためには、トラック事業者様の努力だけでは限界があります。これまでの商習慣を見直すこと、荷主様のご理解とご協力、さらには業界・企業の枠を超えた取り組みが求められます。そこで、登場するのがトラック・物流Gメンです。
トラック・物流Gメンについて

ここからは、トラック・物流Gメンの活動内容についてご紹介いたします。
私たちトラック・物流Gメンは「物流の2024年問題」の解決を目指すため、国土交通省に新たに設置された部署です。「Gメン」という言葉から誤解を招くこともありますが、トラック・物流Gメンはトラック事業者を取り締まる存在ではなく、また監査業務を担う部署でもありません。
トラック・物流Gメンの業務は大きく分けて2つあります。1つ目は「プッシュ型情報収集」と呼ばれる、トラック事業者を対象とした積極的な情報収集です。そして2つ目は、貨物自動車運送事業法に基づき、発着荷主・元請事業者に対して「働きかけ」や「要請」等の行政指導を行う業務です。活動にあたっては、関係省庁や荷主所管省庁と連携の上で取り組んでいます。

2023年7月に発足したトラックGメンは、情報収集機能の強化や物流全体の取引適正化を進めるため、2024年11月に「トラック・物流Gメン」へと改組し、体制の拡充を図りました。具体的には、倉庫業者からの情報収集を新たに開始するとともに、地方運輸局の物流担当職員や各都道府県のトラック協会が新たに設けた「Gメン調査員」が体制に加わることとなりました。

トラック・物流Gメンでは、違反原因行為をしている疑いのある荷主の情報を積極的に収集しています。違反原因行為とは、トラック事業者の法令違反の原因となるおそれのある荷主の行為を指します。代表的なものとしては上図にある通り、恒常的に長い荷待ち時間や無理な到着時間の設定、契約にない付帯業務の依頼や過積載になるような依頼、異常気象時の配送や適正取引における運賃・料金等の不当な据え置きなどが挙げられます。

トラック・物流Gメンの業務の一つである「プッシュ型情報収集」では、トラック事業者への訪問調査や電話聴取による情報収集のほか、情報提供のあった違反原因行為をしている疑いのある荷主の支店や荷捌き場周辺などへのパトロールを行っています。また、近畿管内のトラックステーションや高速道路のサービスエリア ・パーキングエリアにおいて、トラック運転者へのトラック・物流Gメン制度の周知活動も実施しています。

また、トラック・物流Gメンによるアクションがなくとも情報提供を随時受け付けられるよう、国土交通省のHPには悪質な荷主等に関する通報窓口として「目安箱」を設置しております。資料のQRコードを読み取っていただくか、インターネットにて「国土交通省 目安箱」と検索いただければアクセスすることができます。匿名での投稿も可能ですが、いただいた情報を確認・調査するにあたり、追加で伺いたい事項が発生する場合もありますので、会社名やお名前・連絡先をご記載いただけますと、よりスムーズに対応することができます。個人情報の記載が難しい場合は、都道府県もしくはエリアだけでもご記載いただければと思います。また、インターネットでの投稿が難しい場合には、FAXにて情報提供いただくことも可能です。

トラック・物流Gメンのもう一つの業務である「働きかけ」「要請」等については、プッシュ型情報収集や目安箱に寄せられた情報などを基に実施しています。「働きかけ」は、違反原因行為をしている疑いのある荷主に対して、トラック事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要であることについて理解を求める内容となっています。荷主が違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由がある場合には、「要請」または「勧告・公表」を行います。なお、是正指導を実施する際は、情報提供者が特定されるリスクについての聞き取りや情報の活用方法などを説明し、提供者にご理解いただいた上で対応を進めています。

がわかります。しかし、「是正指導をしたらもう終わり」というわけではありません。「要請」等の対象となった荷主等についてはフォローアップを継続し、改善が図られない場合にはさらなる法的措置の実施も含め、厳正に対処することとしています。

また、トラック・物流Gメンの活動には「集中監視月間」というものが設けられています。令和6年は11月・12月に取り組みを行い、2ヶ月間で計432件の法的措置を全国で実施しました。

近畿運輸局では荷主等パトロールによる積極的な現場の状況確認を行っており、大阪運輸支局でもこの取り組みに力を入れています。そもそも、荷主等パトロールとは 2024年問題に対する荷主への広報・啓発活動のことを指します。より多くの物流施設を訪問するため、情報提供があった施設に限らず、周辺の物流施設も含めて、基本的にはアポイントメントなしでご訪問させていただいております。突然の訪問となるためご負担をおかけしてしまうこともありますが、ご対応いただいている皆様には心より感謝申し上げます。
荷主等パトロールでは、情報提供があったことを特定されないよう、1社だけを訪れるのではなく、エリア内で複数社を選定して訪問するようにしています。なお、プッシュ型情報収集や目安箱にご提供いただいた情報の中には曖昧なものもあり、直接的な是正指導には結びつかないものもありますが、情報提供いただいたお気持ちを無駄にしないようパトロールのエリア選定などに活用しております。
訪問時には、荷主用説明チラシやオンライン説明会の案内、標準的な運賃のリーフレットなどを配布するとともに、必要に応じて、その時々で話題となっているトピックに関する資料も持参しています。これらを担当者の方にお渡しすることで、2024年問題やトラック・物流Gメン制度についての周知を図っています。そのほか、訪問先の近隣にトラック事業者がある場合には、情報提供がなくともお困りごとがないか伺うなど、積極的な情報提供の呼びかけを行っています。
こうした取り組みにより、近畿運輸局管内では令和5年11月から令和7年6月末までに、荷主およびトラック事業者合わせて1,700か所以上を訪問しました。

上図では具体的な説明内容などを載せております。
すでに問題意識や危機感を持ち、改善に向けた取り組みを進めている荷主様も多くいらっしゃるかと思います。しかしながら、持続可能な物流を実現するためには、特定の事業者に過大な負担がかかる状況を解消していく必要があります。私たちは、こうした課題について関係者皆様のご理解を得られるよう丁寧に説明を行い、その上で根気強くご協力をお願いしております。
また、近畿運輸局では、トラック・物流Gメンの役割の一つとして、さまざまな現場で起きている物流課題について、トラック事業者様と荷主様双方からお話を伺い、相互理解を深めることが重要だと考えております。パトロールは1社ずつの訪問となるため、地道な活動にはなりますが、物流現場の実態を丁寧に聞き取りながら、私たちにできることを引き続き検討していきたいと考えております。引き続き、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
2025年4月施行 トラック法改正について

続いて、2025年4月施行のトラック法改正について簡単にご説明いたします。
物流改正法の3本柱の一つとして、物流業界の取引適正化と透明性向上を目的とした、トラック事業者の取引に対する規制的措置が新たに講じられました。上図の赤い囲みに3つのポイントを示しておりますが、1つ目は「運送契約締結時の書面交付義務化」について、2つ目は「元請事業者に対する実運送体制管理簿の作成義務化」について、3つ目は「下請事業者への発注適正化」についてとなっております。

具体的な内容についてご説明しますと、1つ目の「運送契約締結時の書面交付義務化」については、運送契約を締結する際に、提供する役務の内容やその対価等について記載した書面を交付することが義務付けられました。これにより、「運賃込みでいくら」というような曖昧な表現ではなく、高速道路料金や待機料なども運賃とは区別して記載し、書面を交付して契約内容を明らかにしなくてはなりません。
2つ目の「元請事業者に対する実運送体制管理簿の作成義務化」については、実運送事業者を管理するため、元請事業者に「実運送体制管理簿」の作成を義務付けたものです。これまでは、元請事業者が運送を下請に委託する際、最終的な運送事業者の社名やドライバー名は把握できても、介在する事業者の数や報酬の分配構造までは見えづらい状況でした。そこで今回の改正では、元請事業者に対し多重下請構造を見える化し、運送体制全体を把握することが求められています。あわせて、各事業者にも請負階層の情報を通知する義務が課されています。
3つ目の「下請事業者への発注適正化」は、利用運送を行う際に委託先への発注が適正に行われるよう求めるものです。例えば、「二次下請までに制限する」といった契約条件を設定するなど、運送取引の健全化を図るための努力義務を課すものとなっています。
また、一定規模以上の事業者には、下請を利用する際の自社ルールとなる運送利用管理規程の作成やその責任者の選任も義務付けられています。
これらは、いずれも2025年4月から施行されています。改正により、荷主が契約書を交付しないといった問題もトラック・物流Gメンの相談対象となっておりますので、ご承知おきください。
さいごに
当記事では、セミナー第一部「実例で知る!トラック・物流Gメンの取り組みとGメン情報活用法」の前半パートから主要なポイントを抜粋してご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
後日、同セミナーの後半パートも掲載いたしますので、そちらもぜひご覧ください。
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