【セミナーレポート】<後編>徹底解説!物流政策パッケージの最新動向とその対応策

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2024年5月、経済産業省 商務・サービスグループ 物流企画室 室長補佐 大西様より政策パッケージ等の最新情報とポイントをご紹介いただくとともに、有識者および事業者を交えたパネルディスカッションを通じて事業者における現状と課題、今後の展望について解説いただくオンラインセミナーを開催いたしました。

当記事では、セミナー後半のパネルディスカッション「物流革新に向けた政策パッケージに関する現状と今後の展望」について、主要なポイントに絞ってご紹介いたします。セミナーにご参加いただけなかった方も概要をご覧いただける内容となっております。
本セミナー前半「基調講演『物流の2024年問題』への対応について(大西様講演パート)」の記事もぜひ併せてご覧ください。
【セミナーレポート】<前編> 徹底解説!物流政策パッケージの最新動向とその対応策

パネルディスカッション登壇者

モデレータ

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志様

パネリスト

セイノーホールディングス株式会社 執行役員 河合 秀治様
経済産業省 商務・サービスグループ 物流企画室 室長補佐 大西 智代様
株式会社インフォマート Platform事業推進部門 執行役員 小野 史裕様
株式会社オプティマインド 代表取締役社長 松下 健

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パネルディスカッション「物流革新に向けた政策パッケージに関する現状と今後の展望」質疑応答

Q1 共同配送についてどのような取り組みが進んでいるのでしょうか?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

近年では、例えば「3社が集まりルートを見直すことで、さらに効率化されるのではないか」というような共同配送に関するご相談も増えているのではないかと思っているのですが、オプティマインド様ではいかがでしょうか。


ー株式会社オプティマインド 松下

直近では、過疎地において共同配送の活用が進んでいるという印象があります。例えばコンビニエンスストアなどの場合、都内から過疎地まで高速道路を使って向かい、配送が完了すればまた戻るというような流れがあるかと思いますが、その中継輸送部分のみを共同配送とするような取り組みがみられます。また、過疎地に倉庫を構えている企業では、その地域内を共同配送とすることで効率化を図るケースもあります。このように、全てを共同配送にするというよりは、最適と考えられる場所、例えば過疎地や陸の孤島と呼ばれるような場所で共同配送を進めようという動きが活発化していると思われます。


ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

人手不足がより深刻化している地域で、共同配送が進んでいるというイメージなのですね。

Q2 紙媒体のデジタル化を進める必要はあるのでしょうか?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

複数の企業で共同配送を行う場合、紙媒体でのやり取りでは難しい場面もあるかと思います。共同配送への動きが活発化する中で、デジタル化への関心も集まっていますか。


ー株式会社インフォマート 小野様

まだ弊社では具体的なご相談はいただいていませんが、共同配送を行う際には請求書なども紙のままでは処理が難しく、手続きも煩雑となるため、デジタル化の必要性は高まるだろうと考えています。弊社のプラットフォームでもこうした潜在的なニーズに対応できるようにしていきたいと思っています。

Q3 人手不足の問題への対策は?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

近年では、トラック運転の危険性や若者の車離れもあり、物流現場で働く若者が少なくなっていることが問題とされています。仕事内容、給与面を改善するだけでは人手不足の問題を解消するのは難しいともいわれていますが、セイノー様では何か対策を行っていらっしゃいますか。


ーセイノーホールディングス株式会社 河合様

ラストワンマイルの領域でいいますと、担い手の多様化が必要であると考えています。ただその場合には、例えばオートマ限定の免許しか持っていない、そもそも車の免許も持っていないというような方が担い手となる可能性もあります。そのような場合に備えては、パートタイムでの雇用や自転車・オートマ車による地域を限定した配送なども可能となるような体制を作っていく必要があります。また、横持ち配送やリレー輸送などで担い手へと荷物を託す方法もあるのではないかと考えています。今後もラストワンマイル領域の多様化に向けては、さまざまな取り組みを検討していく必要があると感じています。


ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

経済産業省様では、政策面でどのような対応をされていますか。


ー経済産業省 大西様

経済産業省では、物流の作業工程においてより効率化を進めていくことが重要であると考えています。例えば、マテハン機器の普及によりこれまで手作業で行っていた業務が自動化することで、物流現場の作業負担は大幅に軽減されると考えられます。技術開発が進み、物流業務が「意外と大変ではない」となることが若い担い手を増やしていくために必要であると考えていますので、今後も技術開発への支援を積極的に進めていくべきだと思っています。

Q4 ドローン活用に実現性はあるのでしょうか?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

ドローンの活用に関しては、コンプライアンス等も含め考慮すべき事項も多いかと思いますが、その実現性についてどのような考えをお持ちでしょうか。


ーセイノーホールディングス株式会社 河合様

弊社では2024年問題への対応として、共同化・無人化・省人化に取り組むことを掲げています。そうした中で、ドローンについては無人化の技術の一つとして考えており、さまざまな研究を行うなど社会実装に向けた取り組みを進めています。法規制に関しては、昨年末にドローンのレベル3.5飛行制度が新設され、補助者・看板等の配置、道路横断前の一時停止といった立入管理措置の撤廃が行われたことで、ドローンの運行がしやすくなり、一運行にかかる人件費が減少しました。しかし、まださまざまな危険性を排除する必要があるため、現在でも実証実験が続けられています。今後、運航体制の省人化が進み、一人の操縦者が複数の機体を操縦できるようになることで、さらに社会実装はしやすくなると思われますが、「ドローンによって全てのモノが自動で運ばれるようになる」という未来は少し考えにくいかと思います。ドローンとは既存の物流の中に組み込まれるものであり、あくまで無人化と省人化双方を実現する一つの道具であるという位置付けで、弊社では実用を検討しています。

Q5 法改正で抑えるべきポイントとは何でしょうか?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

本セミナー前半の基調講演でもお話いただきましたが、新たに法改正が行われたということで、法律の施工後に行政機関に指導を受けないようにするため抑えておくべきポイントがありましたら教えてください。

ー経済産業省 大西様

法改正に伴ってこれから作られる判断基準の元となるのが、基調講演でもご紹介したガイドラインになるかと思います。ガイドラインでは各事業者様に取り組んでいただきたい事項を示していますが、その中でも荷主企業様に特に注目していただきたい点が、荷待ち時間・荷役作業についてとなります。荷役作業のところで非効率を減らせると、ドライバーさん一人あたりの運べる量が増えてきますので、そこをいかに効率化していくのかが非常に重要であると考えています。平たく申し上げますと、「荷待ちが6時間以上です」というような状況ですと行政から調査員が派遣される可能性もありますので、そういった事態は避けていただきたいと思っています。他には、ガイドラインで示しているような「リードタイムをきちんと設ける」ということや「無理のある発注は避ける」というようなことに取り組んでいただければ、指導が入るということは基本的にないかと思います。


ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

ガイドラインの中に「荷待ち・荷役作業等時間の2時間以内ルール」というものがありましたね。基本的には「2時間以内」というルールだとは思うのですが、クレーンを使った荷下ろしなど、特殊な作業が必要となる場合には2時間を超えてしまうということもあるかと思います。そういった場合には、「これは特殊なものです」と説明すればご理解いただけるということかと思いますが、特殊なケースでない場合には2時間以内に、できればさらに時間を短縮するよう取り組んでいれば、指導が入るような事態にはならないということですね。

Q6 中小荷主企業が物流の効率化や業務の可視化のために取り組むべきこととは何でしょうか?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

中小製造企業ではパレット輸送に足る物量がない場合もあるかと思いますが、どのように効率化を進めていけば良いのでしょうか。また、荷主企業の場合は物流業務を委託しているケースも多いかと思いますが、物流業務を可視化するためにはどのようにしていくのが良いのでしょうか。


ーセイノーホールディングス株式会社 河合様

まず、パレット輸送に足る物量がない場合についてですが、最も効率的でコストや環境負荷の低い手段を見出すためには、個数によらない輸送距離や重量に応じた運賃体系を取っている事業者や、特別積合せ貨物運送を行う事業者に相談するのが良いかと思います。また配送ルートの観点から申し上げますと、オプティマインド様のLoogiaのような仕組みを使って、最適なルートを最適な事業者に割り当て、交差しないようなルートを捉えていくということが、輸送の効率化につながると考えられます。


ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

中小企業だからこそ、ルートの最適化や委託先の業務の把握が重要であるということもあるかと思いますが、オプティマインド様にそういったことにLoogiaを活用したいというようなご相談が寄せられることはありますか。


ー株式会社オプティマインド 松下

委託先が多重下請けとなっているケースでは、3PLの企業様や荷主企業様、元請け事業者様も実態を把握できていないということも実は多くあります。そのような場合には、動態管理システムなどを用いて管理をしていきましょうというお話をさせていただくのですが、そこで「どこがコストを負担するのか」「それによって改善した場合にはどこがメリットを享受するのか」という話になり、結果総論賛成・各論反対となってしまうこともあります。ただこの点に関しては、政府の後押しもあって、2023年頃から荷主企業が予算を使って下請け企業へもハードウェアを提供して見える化していこうという動きがみられるようになってきました。そして、最終的にそこでコストメリットが出た場合には、荷主側にも一定の還元があるようにしてくださいというような会話がされることが増えてきている印象です。

Q7 実運送体制管理簿の作成に向けた電子化の動きとは?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

実運送体制管理簿の作成が義務付けられますが、委託先・受託先含めた契約事務の段階から一体的に電子化するようなソリューションはありますか。


ーセイノーホールディングス株式会社 河合様

実はこの部分に関しては多くの課題があると感じています。弊社でも原票情報についてはかなり進めていますが、請求書や運行計画といったものに関してはまだまだで、実は外部だけでなく内部のオペレーションでも紙文化が残っているという状況です。こちらについては荷主企業様と共にデータ化を進めていかなくてはならないと考えています。発荷主側では請求書や運賃の清算書、着荷主側では到着時間などお届け先との荷物データのやり取りをデジタルで行えるようにしていかなくてはならないため、発着それぞれで取り組みが必要となるだろうと考えています。

Q8 フィジカルインターネットの構築に向けて行うべきこととは何でしょうか?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

経済産業省様が主導するフィジカルインターネットの実現に向けて共同輸送プラットフォームの構築が急務かと思いますが、どのような時間軸で進めていけばよろしいのでしょうか。


ー経済産業省 大西様

こちらに関しては私見も入りますが、政府が何かプラットフォームを用意してというよりは、企業の皆様の足元でさまざまな動きが出ることで進んでいくというようなイメージを持っています。現在、私たち政府では地域フィジカルインターネットの取り組みを進めていますが、混載などに興味がある事業者様をまずつなげて、そこから連携を大きくしていき、ある程度の塊を作っていくことが、最終的にフィジカルインターネットの実現へとつながっていくと考えています。もちろん、物流の情報についてSIPなどさまざまな標準を示していくことは国の役割ではありますが、上から押し付けるのではなく、事業者の皆様ができるところから取り組んでいただけるよう後押しをしていくことも私たちの役割だと考えています。

Q9 オプティマインドの理想とする未来の物流の形とは?

ー株式会社ローランド・ベルガー 小野塚様

将来的に日本中の運送事業者様がLoogiaを使うことで、みんなで共同配送ができるというような未来もあるのかなと私は考えることがあるのですが、松下様が考える物流の未来というのはどのようなものでしょうか。


ー株式会社オプティマインド 松下

私は「究極の共同配送」とは、おそらく「全てが特別積合せ貨物運送になる」ということだろうと思っています。「日本物流株式会社」といったような会社が設立されて、その1社に我が社も含めて全ての事業者が集約されるというようなことが究極の理想系といえるのかもしれませんね。
他には、輸配送において「いつ、どこに、何を、どのように」という四つのファクターがあるとすれば、最も変えることのできる「いつ」の部分についてサプライチェーンを川下から川上にバックキャストで計算していって「本当にその日である必要はあるのか」というところにメスを入れていきたいという思いがずっとあります。例えば、需要予測をもとに店舗側から注文が入った段階で、「本当にこれは明日でなければいけませんか、明後日にすると輸送コストがこのくらい下がりますよ、こういったメリットがありますよ」というように話をしていくことができる。最適化をしなくていい状態、「その最適化は実はもう発注の段階でされていますよ」という状態を目指していきたいと考えています。

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3分でわかるLoogia

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