
近年の物流量増加や燃料費の高騰により、物流コストの増加は企業にとって避けられない大きな課題となっています。こうした中で、コスト削減に向けては、第一に自社の物流コストを正確に把握することが重要となります。当記事では、物流コストの可視化に向けたデータ分析の手法や改善へのプロセス等について解説いたします。
物流コストの可視化とは
近年、燃料費の高騰やドライバー不足に伴う人件費の上昇など、物流を取り巻く環境は大きく変化しており、物流コストの増加が企業の収益を圧迫する大きな要因の一つとなっています。こうした課題に対応するため、現在「物流コストの可視化」が注目されています。
物流コストの可視化とは、物流の各工程で発生するコストを項目ごとに分解し、定量的に把握・分析できる状態にすることを指します。従来は、物流コストを総額でしか把握しておらず、その内訳や増加の原因を明確にできていないというケースも少なくありませんでした。しかし、物流コストの可視化に取り組むことで、例えば拠点ごとの保管費用のバラつきや非効率な配送ルートなど具体的な課題を明らかにすることができ、課題の全体像を把握した上で優先順位をつけた改善施策の立案が可能となります。また、荷主企業が複数の委託先を持つ場合にも、コスト情報を一元的に管理できるため、継続的な見直しや全体最適を目指した改善も容易となります。
このように、物流コストの可視化は単なるコスト管理の枠を超え、企業の経営戦略に深く関わる重要なテーマとなっています。感覚ではなく、データに基づいた判断が企業の持続的成長を支える今、可視化されたデータを活用した物流戦略の重要性がますます高まっています。

売上高物流コスト比率の推移
売上高物流コスト比率とは、売上高に占める物流コストの割合を示すもので、物流コストの状況を正確に把握・管理するために重視すべき指標の一つであるといえます。
日本ロジスティクスシステム協会が公表する「2024年度 物流コスト調査報告書【概要版】」によると、2024年度調査の売上高物流コスト比率は全業種平均5.44%となっており、前年度と比較して0.44ポイント上昇しています。この数値は、過去20年間の調査の中では2021年度の5.70%に次ぐ高さであり、物流コストが長期的に上昇傾向にあることを示しています。特に近年は、物流事業者からの値上げ要請が相次いでおり、それが比率の上昇に影響を及ぼしていると考えられます。
2022年度から2023年度にかけては、売上高物流コスト比率は2年連続で減少しており、これは荷主企業による製品価格の引き上げが進んだ一方で、物流事業者からの価格転嫁が進まず、物流業界側の負担が増していたことを示唆しています。しかし、2024年度の結果からは、こうした構図に一定の変化が見られ、物流事業者への価格転嫁がある程度進展した可能性が示されています。

ただし、この調査は回答企業が約200社と限られており、外部環境の影響を受けやすいため、長期的な傾向を把握するには他の統計も併せて見る必要があります。「指数でみた物流コストなどの動向」によれば、物流コスト単価は上昇傾向にあるものの、売上単価の伸びには追いついておらず、物流事業者による価格転嫁は依然として十分とは言えない状況であることが示唆されています。

また、「マクロ物流コストの調査」では、日本の GDP に対するマクロ物流コスト比率が 2019 年度以降上昇傾向にあることが示されており、最新の調査結果である 2022 年度の値は9.6%と過去 20 年間で最も高い水準となっています。

GDP に対するマクロ物流コスト比率が過去最高水準に達しているという状況は、物流が社会全体にとって大きな負担となっていることを示しています。この影響は産業構造や政策にも及ぶため、企業単位の取り組みだけでなく、国家レベルでの物流改善が必要とされる局面にあるといえるでしょう。
これらの結果から、物流費に対する増加圧力は依然として強く、物流コスト比率の上昇へとつながっていることが考えられます。売上単価の伸びがこれをやや上回っているため比率の上昇は一定程度抑えられているものの、物流にかかる負担は無視できない状況が続いているといえるでしょう。局所的な改善にとどまらず、サプライチェーン全体を見渡した包括的なコスト戦略の策定が必要であると考えられます。
物流コスト可視化に向けて集めるべきデータ項目
本章では、物流コストの可視化に向けて集めるべき代表的なデータ項目を4つご紹介いたします。下記4つのデータを横断的に分析することで、物流コストの構造を多角的に捉えることができ、部分的な最適化にとどまらず、全体を見据えた効率的なコスト管理が可能となります。
① WMS(倉庫管理システム)データ
WMSデータは、倉庫内での作業実態を詳細に示すものです。主に商品の入庫や出庫の記録、在庫回転率の推移、返品処理の状況、滞留在庫の有無など、倉庫内で発生した具体的な作業内容や在庫の動きなどを表します。これらのデータを活用することで、保管効率や在庫の適正化だけでなく、倉庫運営にかかるコストの発生状況を正確に把握することが可能となります。
② TMS(輸配送管理システム)データ
TMSデータは、車両の走行状況や運行情報などを細かく記録したものを指します。具体的には、走行距離、積載率、空車率などの基本的な運行情報に加え、計画されたルートと実際に走行したルートの差異や荷待ち時間、荷役作業時間、休憩時間など拘束時間のデータも含まれます。これらのデータを分析することで、輸配送にかかるコストの発生要因や非効率な運行のボトルネックを明らかにすることができます。
③ 財務・購買データ
財務・購買データとは、物流コストを可視化・分析するための基礎となる情報であり、輸送費・荷役費・保管費・物流管理費といった支出明細に加え、発注単価や取引数量、取引先などの購買実績を含むものです。これらの情報をERPや購買管理システムなどから取得し、WMSやTMSのデータと連携することで、物流現場のオペレーションとコストの関係性を的確に把握することができます。
④ 勤務実績データ
勤務実績データとは、物流現場における作業者の稼働状況や作業時間を詳細に示すものです。具体的には、日別や工程別の作業者数、残業時間、シフトの配置状況など人員の稼働実態を表しており、これらの情報を把握することで作業生産性と人件費の関連性を明確にすることができます。
物流コストのデータを分析する手法
収集したデータを分析する手法にはさまざまなアプローチがあり、目的や状況に応じて最適なものを選択することが重要です。適切に分析を行うことで、自社の課題を明確にし、効果的な改善施策を立案することが可能となります。
物流コストの分析においては、コストに大きく影響を与える作業やプロセスを把握するのに有効な「物流ABC」や「重点分析」が代表的な手法とされています。
物流ABC
物流ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)とは、物流業務にかかるコストを「活動(作業)」ごとに詳細に算出し正確に把握する管理手法です。
従来の人件費や燃料費といった費用項目別の集計ではなく、ピッキングや梱包、配送などの具体的な作業単位でコストを計算することで、どの作業がコストを押し上げているのか明確にすることができ、無駄な作業や過剰なコストを発見し、削減することが可能となります。また、人件費・資材費・設備費といった投入リソースを各作業に配賦し、処理量に基づいて単価を算出することで目的別コストの評価や比較が可能となり、コスト構造の可視化や改善の優先順位の明確化に役立てることもできます。
物流ABCの具体的な手順
1. 目的を明確に設定する
第一に、「何のために、どの業務を改善したいのか」という視点から目的を具体的に設定することが重要となります。目的に応じて、対象業務や分析の手法も変わるため、初期段階で分析の方向性を明確にしておく必要があります。
例えば、物流ABCの目的としては以下のようなケースが考えられます。
・出荷やピッキングといった倉庫内作業の効率をコスト面から評価し、改善点を特定したい
・商品の配送にかかる人件費を削減したい
・倉庫内の過剰在庫を減らし、保管スペースを有効活用したい
このように目的を明確にすることで、分析にかかる手間やコストを抑えつつ、的確で効果的な改善策を立案することができます。
2. 作業内容を設定する
次に、対象となる作業内容を設定します。
物流の各プロセスにおける作業内容の例としては、以下のようなものが挙げられます。
・荷受け
・検品
・棚入れ
・ピッキング
・梱包
・伝票作成・出荷処理
・積み込み作業
・配送
なお、作業内容を設定する際は、日常的に発生する定常業務を対象とし、過度に細分化しないことが重要です。ひと目で把握できる程度の粒度にとどめることで、集計や管理の煩雑さを軽減することができます。また、各作業の定義を関係者全員で共有することも分析の精度や改善の効果を高めるのに重要となります。
3. 投入リソース別にコストを把握する
次の段階では、設定した作業ごとに必要なコストを正確に把握します。その際に重要となるのは、コストを「投入リソース」ごとに分けて考えることです。投入リソースとは作業を行うために使うあらゆる資源のことを指します。
具体的な例としては以下の通りです。
・資材(ダンボールや緩衝材など) :使用量
・保管スペース :使用面積
・車両や燃料 :使用量
・設備(棚や作業台、フォークリフトなど) :使用時間
・作業スタッフ :作業時間
こうしたリソースに関するコストデータを収集し、各作業でどのくらい利用されたかに応じて適切に配分していきます。例えば、梱包資材のコストは使用量に基づいて、作業スタッフにかかる人件費は作業時間に基づいて各作業に振り分けるといったイメージです。
このように、リソース別のコストを各作業に対応させて集計することで、作業ごとの実際のコストを正確に把握することができます。具体的には、ピッキング作業の場合には設備の使用時間、スタッフの作業時間、占有した倉庫スペースの面積などに基づきトータルのコストを算出します。
4. 作業ごとの処理量を特定する
続いて、作業ごとの「処理量」を特定します。処理量とはある作業がどれだけ実施されたかを示す数量的な指標であり、作業にかかるコストが何に比例して増減するのかを明らかにするのに欠かせない要素となるため、作業の特性に応じて最も適切なものを選定する必要があります。
処理量の例としては以下のようなものが考えられます。
・荷受け :入荷ケース数
・検品 :検品アイテム数
・棚入れ :棚入れケース数
・ピッキング :ピッキング点数
・梱包 :梱包件数
・伝票作成・出荷処理 :伝票枚数・出荷ケース数
・積み込み作業 :積み込みケース数
・配送 :配送先件数
処理量の集計には、ITシステムのログや記録を活用するのが正確かつ効率的ですが、そうしたデータが存在しない場合には現場での実測や帳票のカウントなどにより処理量を把握する必要があります。いずれにしても、正確な処理量データの把握が作業ごとのコストを的確に算出するための基盤となるため、集計方法の精度と一貫性を確保するための体制を整えておくことが重要となります。
5. 作業別単価と目的別コストを計算
これまでに把握した各作業のコストと処理量のデータをもとに、作業別単価を算出します。作業別単価とは一回あたりの作業にかかるコストのことで、以下の式で求めることができます。
作業別単価 = 作業コスト ÷ 処理量
例えば、ピッキングにかかる総コストが60万円、処理量(ピッキング点数)が600件であれば、ピッキングの単価は 1,000円/件 となります。
また、この作業別単価をもとに以下の計算式を用いて、特定の取引先や商品カテゴリー、サービスなど「目的別」にコストを求めることもできます。
目的別コスト = 作業別単価 × 目的別処理量
作業別単価や目的別コストを可視化することで、コスト構造の課題を明確にし、効率化や収益性向上に向けた改善の取り組みへとつなげることができます。
6. 改善に向けた行動計画を立てる
最後に、算出した分析結果に基づき、各コスト要因に対して具体的な改善策を検討します。例えば、ピッキング単価が高い場合には、作業フローや倉庫内のレイアウトを見直し、作業効率を向上させることで作業時間の短縮を図ることが有効です。配送単価が高い場合には、ルートの見直しや積載率の改善などを図ることで配送効率が向上し、コスト削減へとつながると考えられます。
さらに、改善策を実行した後は再度分析を行い、各工程のコスト構造がどのように変化したのかを数値で確認することも重要となります。このように、改善と再分析のサイクルを繰り返すことで継続的な業務改善と物流コストの最適化が実現するでしょう。
重点分析(ABC分析)
重点分析とは、元々は経営学で用いられており、製品や顧客、業務などを重要度や優先度でランク付けし、経営資源を効率的に活用するための管理手法です。ABC分析とも呼ばれており、管理の重点を明確にすることを目的としています。重点分析の基本的な考え方は、全体の成果の大部分が一部の重要な要素によって生み出されているという「パレートの法則(20:80の法則)」に基づいています。具体的には、売上やコスト、在庫などの指標をもとに対象を評価し、A(最も重要)、B(中程度)、C(重要度が低い)の3つのクラスに分類します。このような分類によって、企業は限られたリソースを無駄なく配分し、より戦略的な意思決定を行うことが可能となります。
重点分析は、物流コストの改善においても有効な手法とされています。コストや工数の大きいプロセスに着目し、物流の各工程に適用することで、コストへの影響が大きい作業を特定し、改善の優先順位を合理的に判断することが可能となります。
なお、先に挙げた「物流ABC」と「重点分析」は似ているとされることもありますが、両者には明確な違いがあります。物流ABCは活動や工程ごとにコストを正確に配分し、物流の詳細なコスト構造を把握するための手法です。一方、重点分析は対象を重要度や影響度に応じてランク付けし、重点管理すべき対象を特定するための手法であり、両者では目的やアプローチが異なります。
重点分析はリソースの配分を最適化し、最小の労力で最大の成果を上げるための指針となるだけでなく、継続的な業務改善における評価基準としても活用することができます。
物流コストに対する重点分析の手順
1. 分析対象のデータを準備・整理する
まずは、物流の作業ごとにコストを洗い出し、高い順に並べて整理します。

2.累積コスト・累積比率を算出する
次に、各作業のコストを上から順に加算し、全体に対する比率(累積比率)を求めます。
・累積コスト = 上から順にコストを加算
・累積比率 = 累積コスト ÷ 総コスト × 100

3. ABCランクを付与する
累積比率に基づき、各作業を以下の3つのランクに分類します。なお、分類に用いる比率の基準は、分析の目的や実態に応じて柔軟に調整することも可能です。
Aランク: 〜70%(重点領域)
Bランク:70〜90%(準重点領域)
Cランク:90%以上(維持管理領域)

4. 改善方針を検討・実行する
改善方針の策定には、ランク別の特性を踏まえた施策の優先順位付けが重要となります。
まず、Aランクに分類される配送・ピッキングの工程は、全体のコストに対して最も大きな割合を占めており、最優先で改善に取り組むべき領域です。ルートの最適化、作業の自動化、動線の見直しなど改善施策を実施することで、たとえ小規模なものであったとしても全体として大きなコスト削減効果へとつながると考えられます。
次に、Bランクに分類される入荷の工程は、Aランクに次いで注目すべき領域です。荷受け時の事前情報の共有やスケジュールの見直しなど、作業効率を向上させる施策を講じることで業務の円滑な遂行が可能となり、物流コスト全体に対しても一定の改善効果が期待できます。
一方で、Cランクに該当する保管・梱包・出荷準備の工程は、コストに占める割合が比較的小さいため、過度な改善投資は避けるべき領域です。このような工程では、標準作業の徹底や作業フローの見直しなど維持管理を中心に効率性を確保し、安定運用に努めることが重要となります。
このように、各ランクに応じた改善施策を実行することで、それぞれの工程のコスト管理やリソース配分が最適化され、コスト削減や企業の競争力強化へとつながることが期待できます。

物流コストの可視化と改善に向けたプロセスとチェックポイント
物流コストを可視化し、最適な改善施策を検討するためには、コストの発生源ごとに詳細なデータを収集し、適切な手法で分析を行うことが欠かせません。その上で、分析結果を実際の改善へとつなげるためには、その内容を具体的な施策として着実に現場へと反映させるプロセスを経ることが重要となります。特に、物流コストの可視化と改善にITシステムを活用することは、情報の一元管理やリアルタイムでのコスト構造の把握を可能とするため、より実効的な改善活動を実現する上で非常に有効な手段であるといえます。
本章では、こうした背景を踏まえ、物流コストの可視化と改善に向けた具体的なプロセスと失敗を避けるために押さえておくべきチェックポイントをご紹介いたします。
物流コストの可視化と改善に向けたプロセス
1. 目的やスコープの明確化
物流コストの可視化を進めるためには、まず目的やスコープを明確にすることが重要です。具体的には、物流コストの削減に向けた数値目標を設定し、輸配送・倉庫・サプライチェーン全体といった対象範囲や期間を明確に定めます。その後、経営層・現場・IT部門など関係者全体で目標やスコープを共有し、合意形成を図ります。この段階で、想定されるリスクや課題を洗い出し、対応策を検討しておくことも重要となります。
2. データ整備・収集
次の段階では、WMSやTMS、ERPなど現行システムからデータを収集するための運用ルールを策定し、分析に必要な項目の選定を行います。その際には、データの単位や形式を統一するとともに、欠損や不整合の管理を徹底することも重要となります。さらに、定期的なデータ更新や監視体制の構築もデータ品質を維持する上で大切なポイントとなります。
3. システムの選定と導入計画
物流コストの可視化と改善に向けてITシステムを活用する場合、初期費用や運用コスト、導入のしやすさ、今後の拡張性など複数の観点から検討し、最適なシステムを選定する必要があります。導入を進める際は、まず小規模な範囲から開始し、運用効果を検証しながら段階的に拡大していくことが重要となります。
4. 現状分析と改善シナリオの作成
可視化されたデータを基に、自社の物流コストやパフォーマンスを業界標準や同業他社と比較し、現状を正確に把握します。自社の強みや課題を明確にすることで、改善すべきポイントを特定することができ、より戦略的な施策の策定へとつなげることができます。
また、改善策を検討する際は複数のシナリオを作成し、それぞれの実現可能性や費用対効果、業務への影響などを総合的に評価した上で実行の優先順位を明確にすることが重要となります。
例えば、積載率が低いという課題には、共同配送や混載便を利用し車両の空きスペースを有効活用するといった方法や、荷物サイズの見直しやパレット化によりデッドスペースを削減するといった手法が考えられます。また、配送回数が過多であるという課題には、需要予測に基づく出荷調整により出荷の平準化を図る施策や、定期便から隔週便への集約、配送ルートの見直しなどを行うことで配送効率の改善を図る方法も考えられます。このように、複数のシナリオを検討することで自社に最適な改善策を見出すことができるでしょう。
5. PoCの実施とROI試算
検討した改善策に基づき、まずは限定的な範囲でPoC(概念実証)を実施します。これは、実際の業務フローの一部に新たな施策を適用し、現場レベルでの有効性や運用面での課題を検証するために必要となるプロセスです。あわせて、定量的なシミュレーションや試算を行い、コスト削減や生産性向上など自社の課題に対してどの程度の効果が見込めるのかを数値で明らかにし、ROI(投資対効果)を具体的に算出します。これにより、施策が事業全体に与えるインパクトを明確にすることができ、経営層が導入拡大を検討する際の判断材料となります。さらに、PoCの結果を通じて得られた知見は、本格導入に向けた課題の洗い出しやスムーズな展開計画の策定にも活用することができます。
6. 改善施策の実行と継続的な見直し
PoCやシミュレーションで効果が確認された改善施策を全体へと展開していきます。実行後も設定した数値目標を基に継続的なモニタリングを行い、実際の効果を定量的に把握することが重要となります。ROIについても定期的に再評価し、コストに見合った成果が得られているのかを確認することで、課題の早期発見や必要に応じた改善や修正が可能となります。このように、PDCAサイクルを継続的に回すことで業務効率化や運用の最適化による物流コスト削減が実現し、企業の持続的成長へとつながると考えられます。
物流コストの可視化と改善に向けてのチェックポイント
①目的・KPIが数値で定義されている
物流コストの可視化においては、目的とKPIを具体的かつ数値で明確に定義することが重要となります。これにより、現状の課題を正確に把握し、改善施策の効果を客観的に評価するための基準を明らかにすることができます。
②スコープを段階的に拡大するロードマップがある
改善に向けた施策を進める際は、初期段階では範囲を限定し、徐々に対象範囲を拡大するようなロードマップを策定することが重要です。こうすることで、リスクを最小限に抑えながら成果を積み重ね、全体への展開に確実につなげることができます。
③改善施策の推進に現場とIT部門担当者の両方が参加している
改善施策を円滑に進めるためには、物流現場の実務担当者とIT部門の双方が連携し、現場の業務知識とシステム面の技術力を融合させる体制を整えることが重要となります。こうすることで、現場に即した実効性の高いソリューションを実現することが可能となります。
④システムは利用状況に適した料金体系を選ぶ
無駄なコストを避け、投資対効果の最大化を図るためにも、使用するシステムは企業の利用規模や頻度に適した料金体系のものを選定する必要があります。
⑤KPIレビューやROIの見直しを定期的に実施する
定期的にKPIレビューを実施し、KPIの進捗や課題を継続的に把握することも重要です。また、ROIの見直しも定期的に行い、各施策の投資効果を確認することで、必要に応じた戦略の修正や追加投資の判断を行うこともでき、継続的な改善サイクルの維持へとつながります。
⑥追加投資判断を経営層が即決できる情報が揃っている
経営層が迅速かつ的確に追加投資の判断を下せるよう、適切なタイミングで必要な情報を提供することができる体制を整えることが重要です。精度の高い客観的なデータを提示することで、意思決定のスピードが高まり、施策の実行もより円滑に進むと考えられます。
物流コストの可視化と最適化を実現する「Loogia(ルージア)」
ここまで、物流コストの可視化や改善に向けたデータの分析手法やプロセス、実務上のポイントなどをご紹介いたしましたが、実際の現場では必要なデータの収集や分析に十分な時間やリソースを割くことが難しいというケースも少なくありません。
こうした課題に対応するため、弊社では「Loogia 配車作成」において、コストを基軸とした自動配車機能や配送コストを可視化する機能を提供しております。日々の配車判断から運用全体の見直しに至るまで費用根拠に基づいた一貫性のある意思決定を可能とし、収益性と効率性を両立した持続的な物流体制の構築を支援いたします。
コストに基づく配車判断が可能に
従来の自動配車では走行距離や時間の最小化が重視され、車両ごとの単価や人件費、契約条件、高速道路利用料といったコスト面は現場の経験や属人的な調整に委ねられてきました。そのため、複数の配送手段が混在する中で最適な選択を行うためには、配車担当者による試行錯誤や判断のバラつきが避けられない状況にありました。
こうした課題を解消するため、「Loogia 配車作成」では配送条件、業務効率、コストの3軸を同時に考慮した配車を可能とする機能を搭載しております。自社車両・傭車・路線便など多様な配送手段を横断的に比較し、総コストを最小化する最適な車両や人員配置、ルート選択、高速道路の利用までを自動で選定いたします。距離や時間の段階料金、車格差、人件費、協力会社ごとの契約条件といった複雑な原価設定は不要です。概算費用の入力のみで距離・所要時間・稼働時間に応じた柔軟な料金体系に対応し、直感的な操作で運用負担を最小限に抑えることができます。配送コストの適正化に加え、現場で繰り返されてきた調整業務の負荷を軽減し、物流部門全体の判断精度・一貫性・再現性を高める運用基盤を構築することができます。
配送コストの可視化により改善余地を特定
「Loogia 配車作成」では、配送ごとに発生する距離・所要時間・稼働時間に応じた配送コストを入力することで、コースや訪問先単位での配送コストを月次・年次で継続的に可視化することができます。これにより、採算の取れていないコースや訪問先の特定、配送手段やルートの見直し、非効率なサービスの削減といった数値に基づく改善点の特定が可能となります。さらに、算出された配送コストは、運賃交渉や委託契約の見直しにおける根拠資料として有効であり、配送先ごとの粗利貢献分析にも活用することができます。
Loogiaの活用により持続的な物流の改善を実現
「Loogia 配車作成」は、属人的な判断に依らず費用根拠に基づく運用を可能とすることで、配車業務の高度化と物流コストの継続的な最適化を支援いたします。日々の現場対応から経営判断に至るまでデータに基づく意思決定をサポートすることで、持続的な物流の改善と企業競争力強化の実現に貢献いたします。
まとめ
当記事では、物流コストの可視化に向けたデータ分析の手法や改善へのプロセス等について解説いたしました。
物流コストの可視化は、現場の課題や改善点を明確にし、具体的な対策を講じるための要となるものです。数値に基づいた客観的な分析を継続的に行うことで、コストの無駄や非効率なプロセスを洗い出し、最適な運用方法の構築が可能となります。こうした取り組みを積み重ねることで、単なるコスト削減にとどまらず、業務全体の効率化やサービス品質の向上、持続可能な物流体制の構築へとつながることが期待できます。
弊社開発の「Loogia」は、最先端の輸配送最適化ソリューションです。独自の組合せ最適化技術と実走行データ解析を活用し、配車計画の自動化にとどまらず、輸配送支援、動態管理、データ分析、共同配送の支援など、輸配送業務全体を高度に効率化いたします。さらに、コストを基軸とした自動配車機能や配送コストの可視化機能により、配送ごとの費用構造を明確化し、経営判断や運用改善に役立つ数値的根拠を提供することで、物流コストの持続的な改善と最適化を支援いたします。

