企業競争力を高める荷主主導の物流戦略とは?

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近年、物流は単なるコストから企業競争力を左右する重要な戦略資産へと変化しています。荷主主導で物流全体を設計・管理し、効率化と品質向上の両立を図ることは、企業の持続的成長を支える要となります。当記事では、荷主主導の物流戦略の重要性やメリット等について詳しく解説します。

荷主が主導する物流改革が企業の競争力を左右する

近年、物流は単なる業務領域を超え、企業戦略の中核を担う存在へと変化しています。特に注目すべきは、「誰が物流を主導するのか」という視点です。これまで多くの企業では、物流業務を外部の専門事業者に委ね、「任せる」という姿勢が一般的でした。しかし、環境の変化や顧客ニーズの多様化により、荷主自身が物流の設計や管理に主体的に関わる重要性が高まっています。

需要予測に基づく在庫配置や納品スケジュールの柔軟な調整、顧客ニーズを踏まえた配送オプションの導入など、物流設計を自社のビジネスモデルや顧客価値に即した形で構築することで、物流を事業成長を支える戦略的基盤として機能させることが可能となります。単なる輸送手段ではなく、物流を顧客体験や経営方針と直結する戦略的領域と位置付け、自社のビジネス目標に沿って物流戦略を策定することで、サービス品質向上や他社との差別化、企業の競争優位性へとつながっていくと考えられます。

こうした戦略的物流を実現するためには、荷主が物流改革の中心的な役割を果たす必要があります。従来のような物流事業者主導ではなく、荷主が主体的に現状を把握し、課題の抽出や改善策の策定・実行までを担う体制を構築することが重要です。また、業務委託先に対しても明確なビジョンと評価指標を提示し、単なる委託関係を超えて戦略的パートナーとしての協働関係を築く姿勢が求められます。

これからの時代、荷主が物流を「動かす」存在として機能することが、企業の競争力を大きく左右する鍵となるのです。

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「物流はコスト」から「物流は戦略資産」へ

これまで、物流は「効率化=コスト削減」という枠組みで語られることが一般的でした。物流は商品や製品を運ぶために必要な裏方業務であり、利益を生まないコストセンターとしてみなされてきたのです。しかし現在、こうした固定観念は大きく変化しており、物流は単なるコスト管理の対象ではなく、顧客満足やブランド体験そのものに直結する重要な柱として捉えられています。例えば、配送の遅延は顧客の信頼を損なう一方で、安定したリードタイムや柔軟な対応はロイヤリティの向上や継続購買を促す力となります。また、物流効率の向上は在庫管理や供給体制の柔軟性を高め、市場の変化にも即応できる経営基盤の構築につながると考えられます。

このように、物流はもはや「守りのコスト」ではなく、企業価値を創出する「戦略資産」へと進化しています。実際、一部の先進的な企業では物流を経営戦略の重要テーマと捉え、物流施設やオペレーションの再構築に取り組むことで、収益の拡大や市場での優位性を高めています。

企業が物流をどのように捉えるのか。単なるコストとみなすのか、戦略資産として積極的に活用するのか。その姿勢の違いが、企業の成長スピードや市場での立ち位置に大きな差を生み出すと考えられます。

企業の競争力を高めるために必要な視点とは

企業が持続的な競争優位を築いていく上で、物流はもはや単なる実行部門ではなく、経営の全体戦略と密接に連動する戦略資産であると考えられます。本章では、企業の競争力を根本から高めるために重要となる2つの視点、「戦略的な配送計画と可視化」と「データドリブンな意思決定によるコストと品質の両立」について詳しく解説します。

戦略的な配送計画と可視化

物流は調達、保管、在庫管理、輸配送、納品、そして顧客対応まで、多岐にわたる機能が連携して初めて最大の成果を発揮します。その中でも「配送」は顧客と直接つながる唯一のプロセスであり、物流の品質や対応力を顧客が直接体感し評価する重要な接点となるものです。だからこそ、配送ネットワークの設計と可視化を戦略的に進めることが、物流全体の価値を高める上で重要となります。

戦略的な配送計画とは単なるルート設定を超えて、配送頻度の見直しや時間帯の調整、在庫配置との連携など、複数の要素を統合的に設計することを意味します。こうした計画を実効性のあるものとするには、配送現場の構造やオペレーションの流れを可視化し、正確に把握することが重要となります。例えば、出荷実績や需要傾向を可視化することで、曜日や地域ごとの偏りを把握し、それに応じた配送頻度や配送時間の最適化を図ることが可能となります。

可視化によって配送の全体構造を把握し、現場の判断や運用を標準化・平準化することで、効率的かつ安定した配送体制を実現することができます。配送を単なる末端の工程ではなく、全体設計の中核として再構築することで、企業全体のサービス品質向上や競争力強化へとつながると考えられます。

データドリブンな意思決定によるコストと品質の両立

物流戦略における意思決定の精度は、従来の経験則や現場感覚のみに頼ることは難しくなっています。出荷から納品まであらゆるプロセスが複雑に絡み合う現在の物流では、データを起点とした論理的かつ客観的な判断が不可欠であるといえます。出荷実績、配送スケジュール、車両の稼働状況、再配達件数、在庫回転日数、欠品率といった複数の指標を個別に見るのではなく、相関性や傾向を横断的に分析することで、真の課題を特定し、改善の方向性を導き出すことができます。

このようなデータドリブンなアプローチにより、単にコストを削減するだけでなく、配送品質を向上させながら効率化を実現することが可能となります。

例えば、再配達の多いエリアでの時間帯の見直しや、車両・人員といったリソース配分の最適化、特定商材の補充サイクルの全社的な見直しなど、現場の課題に対して経営レベルで具体的な対応策を講じることで、企業全体のパフォーマンスやサービス水準を大幅に向上させることができます。

重要となるのは、こうした施策がすべて「数値で説明できる戦略」として成立し、企業全体での意思決定に反映されることです。データ基盤や可視化ツールの活用を通じて、部署間で共通の判断軸を持つことが、物流を単なる業務部門から経営の中核を担う機能へと転換させ、結果として企業の競争力強化につながっていくと考えられます。

荷主主導で物流体制を構築するメリット

物流全体のコスト構造を見える化

物流業務を外部の事業者へ委託している場合、そのコストの内訳や推移を自社で正確に把握できていないというケースも少なくありません。委託には利便性がある一方で、費用の実態が見えにくく、不要な支出や改善の機会を見逃す可能性も考えられます。また、経営資源の最適な配分が難しくなり、企業全体の収益力や競争力を損なうおそれもあります。

これに対して、荷主が物流の仕組み作りを主導し、自ら物流体制の設計・管理を行う場合には、運送費・保管費・再配達コスト・荷役作業費などあらゆる物流関連コストを可視化することができ、委託時には把握が困難であったコスト構造や課題を自社の視点で明確に捉えることが可能となります。その結果、どの工程にコストが集中しているのか、あるいはムダが発生しているのかを具体的に把握することもでき、経営判断の質を格段に向上させることができます。さらに、可視化した物流コストを売上や利益と照らし合わせて分析することで、単なるコスト削減にとどまらず、費用対効果の高い領域に戦略的に投資することも可能となります。例えば、需要の多い地域への集中配送や共同配送による効率化、リードタイムの短縮による在庫圧縮など、収益に貢献する物流施策へリソースを重点的に配分することができます。

このように、荷主主導で物流の仕組みを構築することで物流プロセス全体の透明化と統括的な管理が可能となり、コスト削減や企業の経営基盤強化、競争力向上へとつながると考えられます。

顧客満足度やロイヤリティの向上

先にも述べたように、物流は単なる「モノを運ぶ手段」ではなく、顧客体験の質を左右する重要な接点となるものです。特に、配送の正確性や柔軟性は顧客満足度や企業イメージに直結するため、配送ルートや時間帯、頻度などの運用計画を荷主自ら策定・管理することは、顧客ニーズに即したきめ細かなサービスを提供する上で欠かせません。

具体的には、プロモーションによる一時的な需要増に対し、荷主側が事前に社内で情報を共有し、出荷・配送体制を調整することで、品薄による販売機会の損失を防ぐことができます。また、優先度の高い重要顧客には柔軟な対応が可能な自社便を、それ以外の顧客層には委託便を活用するなど、顧客特性に合わせて配送手段を調整することで、関係性に即した最適な対応が可能となります。さらに、新商品や重点商材を適切なタイミングで必要な場所に確実に届けられるよう物流体制を整えることで、販売機会の最大化に加え、現場の負荷軽減や作業の平準化を図ることができます。例えば、店舗が必要とする時間帯に商品を確実に届けることで、欠品リスクを防ぐだけでなく、現場のオペレーション効率も向上させることができ、店舗側・顧客双方の満足度向上へとつながります。

くわえて、温度管理や梱包品質の向上、誤配送の防止といった品質管理も荷主が主体的に設計・管理することで、高い水準を維持することができ、企業の信頼性向上に寄与します。こうした満足度の高い体験は、継続的な取引の促進や企業へのロイヤリティ向上へとつながるものです。

このように、荷主が物流を戦略的にマネジメントすることは、効率化やコスト削減だけでなく、市場競争力を高めるためにも重要であるといえます。

環境への配慮と企業イメージの向上

物流は環境問題と密接に関わる分野であり、サステナブルな物流体制の構築は企業の経営戦略における重要課題となっています。企業の持続可能な成長と社会的信頼の確立を実現するためには、荷主自らが物流体制の設計・運用に関わる必要があります。

効率的な物流システムの構築は、コスト削減や業務効率の向上だけでなく、環境負荷の軽減にも大きく貢献するものです。荷主主導で配送ルートや積載効率、輸送頻度などを最適化することで、リソースの無駄や輸送回数・距離を削減することができ、CO2排出量やエネルギー消費量の抑制へとつながると考えられます。

このような取り組みは、企業のCSRやESG対応の一環として評価され、消費者や取引先からの信頼を高める要因にもなります。また、社会的責任を重視する企業としてのブランドイメージの確立にも寄与するものであり、企業価値を長期的に高める効果が期待できます。

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最適な物流戦略の立案を可能とする「Loogia」

弊社では、自社開発の自動配車システム「Loogia(ルージア)」を活用した、シミュレーション分析サービス「データアナリティクスサービス」を提供しております。

専門のエキスパートが「Loogia」の高精度なルート最適化機能を駆使し、コース最適化・エリア再編・拠点配置など、スコープや目的に応じた各種シミュレーションをご提案いたします。現状の可視化から最適化、キャパシティ予見に至るまで、定量的な分析結果に基づき、最適な物流戦略の立案とデータドリブンな意思決定の実現を支援いたします。

スコープや目的に応じたシミュレーションをご提案

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データアナリティクスサービスでは、スコープや目的に応じて柔軟なシミュレーション分析をご提供しております。コース最適化・エリア再編・拠点配置といった物流ネットワークの再構築に対し、「現況診断」「最適化」「キャパシティ」の3つの観点からアプローチが可能です。

「現況診断」では、実際の配車表や配送実績などのデータをもとに、現在の配車計画の精度や現場運用の整合性を検証し、集配条件やリソースを維持した状態での改善余地を可視化します。初期段階の現状把握や課題特定に有用な手段としてご活用いただけます。

「最適化」では、配送時刻や手段などの集配条件を調整しながら、実運用を想定したシミュレーションを行い、最大ポテンシャルの把握を図ります。ルート数削減など配送プロセスの見直しに有効です。

「キャパシティ」では、ドライバー数や車両数などの保有リソースを調整しながら、現場が実際に対応可能な最大キャパシティを明らかにします。施設ごとの処理能力や必要リソースの予見なども可能であり、中長期的な体制構築の検討や仮説検証にご活用いただけます。

荷主様の「データアナリティクスサービス」活用例

①委託業務のブラックボックス化解消とルート配送最適化

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大手飲食チェーンを展開する荷主様では、物流センターから数百店舗へのルート配送業務を全て外部の物流事業者様に委託していたものの、その実態を把握できておらず、業務がブラックボックス化していることが課題となっていました。そこで、まずは現行の配車表をもとにシミュレーションを行い、現況を可視化。シミュレーション結果と実際の運用実績を比較することで、現在の業務運用の信頼性や妥当性を客観的に評価しました。この分析結果をもとに、業務委託契約の見直しなど短期的な対応を進められました。さらに、最適化シミュレーションを通じて改善のポテンシャルを定量的に把握することで、配送コースやルートの見直しなど、中期的な施策の検討にもご活用いただきました。

②改善ポテンシャルの可視化と配送の最大キャパシティの把握

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大手食品販売の荷主様では、店舗からエリア内のお客様に自社便で配送を行っています。そのため、店舗ごとに必要なドライバーを配置し、お届け時間帯の指定も細かく設定する必要がありました。こうした中で、今後の事業展開を見据え、配送オペレーションの最適化に着手したいというお考えがあり、現況の可視化とドライバーやエリア、お届け時間帯に関わる配送の最大キャパシティの把握を目的に、データアナリティクスサービスをご活用いただきました。配送実績を詳細に分析し、実績をもとに現況診断シミュレーションを実施。シミュレーション結果と実データの比較により、現況の改善ポテンシャルを可視化しました。さらに、ドライバー配置や配送エリアなどオペレーション条件を変更しながらキャパシティシミュレーションを実施することで、最適な配送オペレーションの検討を行いました。

荷主主導の物流戦略に関するよくある質問

物流事業者に任せるのと、自社で戦略を策定するのとでは何が異なるのか?

物流事業者に任せる場合と荷主が主体となる場合とでは、戦略の立案と実行における主体性に違いが生じます。外部に委託する場合、配送の迅速化や倉庫運営の効率化など現場レベルでの効果は期待できますが、戦略や計画といった上流の意思決定までを外部に依存することになるため、荷主自身が物流全体を十分にコントロールできなくなるおそれがあります。

一方、荷主が主体となり戦略を策定した場合には、顧客ニーズや事業目標に沿った柔軟な設計が可能となり、サービス品質やコスト効率の最適化につながります。「任せる物流」から「自ら動かし、改善していく物流」への転換が、競争力を高める鍵となるのです。

物流事業者との関係性はどのように変化するのか?

荷主主導で物流設計を行うことで、物流事業者とより戦略的なパートナーシップを築くことができます。定量的で具体的な計画を共有し、両者が意見を交わしながら議論を進めることで、最適な契約内容の調整や役割分担の明確化も可能となり、物流の品質向上やコスト効率化を目指す協働関係を築くことができます。

Loogia導入に向けた準備は何からするのが良いのか?

まずは、現状の配送データや車両の稼働状況、ドライバーの稼働数などを整理し、改善のためのKPIを明確に設定します。その上で、トライアルの対象となる拠点を選定し、「小規模導入→効果検証→運用拡大」の流れを見据えたロードマップを策定することが効果的な進め方です。

まずはご相談いただければ、現状や課題に最適なご提案をさせていただきます。

まとめ

当記事では、荷主主導の物流戦略の重要性やメリット等について詳しく解説いたしました。

現在、物流は単なるコスト削減の手段ではなく、企業の競争力を左右する戦略的資産となっています。荷主主導で物流戦略を策定し実行することで、物流全体の効率化や透明化が進み、企業価値向上や競争力強化へとつながると期待できます。

弊社開発の「Loogia」は、独自の組合せ最適化技術と実走行データ解析を活用し、配車計画の自動化にとどまらず、輸配送支援、動態管理、データ分析、共同配送の支援など、輸配送業務全体を高度に効率化し、荷主様の物流改革を強力にサポートいたします。ご興味のある方はぜひ下記より資料をご覧ください。

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