
社会を支える物流業界において、運転手不足が深刻さを増しています。
社会全体で推進している働き方改革の波は物流業界にも及んでいますが、「2024年問題」と呼ばれるなど、却って苦しい思いをしている事業者も少なくありません。
本記事では運転手不足の背景やその解決策、これからの運転手に求められるスキル・変化について解説します。
物流業界はなぜ運転手が足りないのか?
日本の物流業界において「運転手不足」は、慢性的な課題となっています。
それを裏付けるように、ドライバーの有効求人倍率は長らく全職種平均の約2倍で推移しています。

有効求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」をもとに作成)
特に近年、EC市場の急成長や社会全体の人手不足といった要因が重なり、この課題は一層深刻化しています。特に2024年の「働き方改革関連法」の適用によって、物流現場にはかつてなく大きな変化が求められています。
では、なぜここまで運転手が足りなくなっているのでしょうか?その背景には、いくつかの要因が存在します。
高齢化による担い手の減少
まず第一に、運転手の高齢化が挙げられます。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、運転手の平均年齢は全職種平均よりも高くなっています。特に大型トラック運転手の平均年齢は50歳を超えています。

平均年齢(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに作成)
また若手の新規参入も追いついていません。
業界に従事する人の年齢別割合を見ると、全産業平均では15〜29歳の若手が17%であるのに対し、道路貨物運送業では9%にとどまっています。
一方で45〜59歳の割合は44%と全産業平均を10%ポイントも上回っており、ここにも高齢化の影響を見ることができます。

就業者の年齢構成比(総務省「労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)4月分結果」)をもとに作成
これは少子高齢化という社会的背景に起因しており、単なる業界内の問題にとどまりません。
今後さらに高齢のドライバーが引退していくことを考えると、運転手不足は一時的な現象ではなく、今後も続く「構造的な人手不足」と言えるでしょう。
長時間労働などの過酷な労働環境
運転手という職業は、長時間労働・深夜勤務・休日出勤など、一般的な職種と比べて過酷な働き方になることも少なくありません。
2024年には、これまで働き方改革関連法によって段階的に実施されてきた時間外労働時間の上限規制がトラック運転手にも適用されました。
しかしトラック運転手の年間労働時間は全産業平均より500時間程度多く、やはり長時間労働が必要とされる状況は続いています。

年間労働時間数(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)をもとに作成
「2024年問題」が拍車をかける
2024年4月までに施工された、トラック運転手への時間外労働の上限規制の適用と、中小企業への時間外割増賃金率の引き上げによる「2024年問題」が本格化しています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
これにより、一人あたりが対応できる輸送量が減少し、業界全体としてさらに多くのドライバーを必要とする状況に追い込まれています。
これらの要因が複雑に絡み合うことで、運転手不足は日本の物流そのものを揺るがす社会課題へと発展しています。
「運転手不足」を乗り越えるための5つの解決策
深刻化する運転手不足を解消するため、業界全体が変革に向けて動き出しています。
持続可能な物流を実現するためにさまざまなアプローチが模索されていますが、ここでは主な対策を5つ紹介します。
1. 待遇改善にとどまらない「働き方改革」
今いる人材の活躍を促進し、若手の人材を確保するためには「働き方改革」が重要です。
残業時間の削減や賃金の見直し、休暇の取りやすさなどの待遇改善はもちろん、これを実現するためには「働き方」を抜本的に変えていく必要があります。
無理なく運行するためのスケジュールの見直しや、ドライブレコーダーやデジタコなどのICTを活用した運転手の安全確保など、生活リズムや心理的負担にも配慮した職場環境の整備が人材確保の鍵となります。
2. 女性・シニア・外国人の活用
従来は男性中心だった運転手という職業にも、今や多様な人材の参入が期待されています。
たとえば、軽貨物配送やルート配送のように、体力的な負担が比較的小さい業務では、女性運転手が活躍しています。
また、定年後のセカンドキャリアとしてトラック運転手を目指すシニア層向けに、自治体や民間事業者が育成講座を実施するケースも増えています。
さらに注目されているのが外国人労働力の活用です。一定の技能と専門性を持った外国人材を即戦力として雇用する「特定技能」として、自動車運送業でも受入れが認められています。
3. 地域連携と中小企業の支援
地方では都市部以上に運転手不足が深刻化しています。こうした地域では、企業単体での対策には限界があるため、地域全体での連携が重要になります。
たとえば、地元の高校・専門学校との連携による職業教育の充実、地域内事業者間での共同配送ネットワークの構築、行政と連携した免許取得支援制度の導入など、地域ぐるみの取り組みが各地で始まっています。
物流事業者に対する助成や設備投資支援も、運転手の定着を後押しする有効な施策です。
4. AI・DX化による省人化の可能性
AIやデジタル技術の活用は、限られた人手で物流を効率的に回す手段として注目されています。
従来は熟練の配車担当者が担っていた配送ルートの作成も、AIによって交通状況や時間指定、積載効率を踏まえた最適化が可能になっています。
配送ルートの最適化は、無駄な走行や待機時間を削減し、積載率を高めながら車両台数そのものを減らすことにつながります。
これにより現場の省力化はもちろん、属人化の解消や業務の標準化にもつながり、省人化の実現に向けた重要な取り組みとなっています。
5. 荷主とのパートナーシップ強化
物流事業者だけが努力しても、業界全体の改善にはつながりません。荷主との協力体制が不可欠です。
既に待機時間削減のための予約システム導入や、積載率を高めるための共同配送スキーム構築などが進められています。
こうして荷主と物流事業者が「同じ課題に向き合うパートナー」として協働することが重要です。

運転手の将来はどう変わるのか
これまで運転手といえば、「荷物を運ぶ職業」というイメージが一般的でした。しかし、物流ニーズの多様化やDXの進展により、その役割は大きく変わりつつあります。
今後の運転手には、単に運転技術を持っているだけでなく、荷主や配送先との調整、積載率の管理、配送トラブルへの対応など、現場で柔軟に判断し、運行全体をマネジメントできる力が求められるようになります。
また人手不足対策として業務へのテクノロジーの導入が進んでいくため、デジタルツールを使いこなす力も重要です。
今後ますます重要になるのは、こうした変化に対応し、技術と共存しながらそれを活かすスキルを持った人材です。物流を支える存在として、運転手は単に荷物を運ぶだけではなく、現場のキープレイヤーへと進化していく必要があるでしょう。
人手不足の現場を効率化するならLoogia
人手不足が慢性化する物流現場では、「限られたリソースでいかに効率的に回すか」が鍵となっています。そこで注目されているのが、AIを活用した業務支援ツールの導入です。
弊社が提供するLoogia(ルージア)は、配送ルートを自動で作成できるクラウドシステムで、運転手や配車担当者の業務負荷を大幅に軽減します。
特に、経験の浅いスタッフでも簡単に操作できる直感的なUIにより、専門スキルに依存せず、高精度な配送計画を立てることが可能です。車両や運転手の稼働効率を最大化することで、現場の人手不足をカバーしながら、物流事業者の持続可能な成長を支援します。
まとめ
物流業界における運転手不足は、高齢化や労働環境の厳しさといった構造的な問題に加え、2024年問題などの法改正も影響し、年々深刻さを増しています。
今後この課題を乗り越えるには、待遇改善にとどまらず、多様な人材の活用や地域・業界を超えた連携、そしてテクノロジーの活用による効率化が不可欠です。
また運転手という仕事は、ただ荷物を運ぶだけでなく、現場全体をマネジメントする力が求められる時代へと移行しています。
これからの物流業界には、ITを活用し、業務効率や生産性を高めながら持続可能な物流体制を築いていくことが求められています。
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