弊社の自動配車システム「Loogia(ルージア)」は、2019年から提供を始め、これまで累計200社以上の企業様に導入をいただいています。
本記事では、配車システムの導入障壁とその解決事例を弊社ならではの経験を元にご紹介します。
配車システムを検討中の方、検討しているけども独自業務のシステム化が難しくお悩み中の方にぜひご覧いただきたいと思います。
様々な現場と向き合いLoogiaのサービス開発を推進してきた開発責任者に監修を依頼し作成しました。事例を踏まえたリアルな情報をご覧いただけます。
まず本記事では複数の現場である程度共通した課題と解決策について紹介いたします。より具体的な事例については今後のシリーズ記事にてご覧いただけます。
自動配車システムLoogiaとは
Loogiaは「どの車両がどの訪問先をどの順でどのルートでまわると最も効率的か」を計算する自動配車システムです。主な導入目的として、配車業務の効率化と属人化解消、ルート最適化による台数削減や人件費削減、コストカットやCO2削減などがございます。
対象業種は幅広く、物流企業のみならず荷主や小売、卸売などに対応しています。さらには新サービスとしてフィールドサービス(点検、納品設置、訪問介護など現場作業が発生するサービス)向けの「Loogia訪問予約」をリリースし、人やモノの移動の効率化という観点を軸に日々開発を行っています。
直近では2024年問題への危機感から、既存の物流網を作り直したい・委託配送を見直したいという要望が増えてきています。専門の担当者が現場の方々の声を聞きながら、適切なLoogiaの活用方法のご提案やサービス改善を進めています。
サービス提供の中でぶつかってきた4つの壁
今まで非常に多くの商談をさせていただいた中で、導入に至らないケースやすぐにはスタートできないケースも多くございました。
もちろん成功している事例はございますが、現実にはシステムを導入するまでに複数の壁があり、さらに導入後すぐに課題が解決するわけでもありません。自動配車システムに限らずシステムを自社のオペレーションに合わせて導入する際は、どんなサービスであっても似た事象が発生するのではないでしょうか。
下記からは、Loogia開発責任者の話を元に、どのような場合に自動配車システムの導入が難しいのかご紹介します。
①データの準備が困難
主に情報システム部門など、社内のデータを管理する方と話を進める際に発生する問題です。
・配送計画を作成するために必要なデータ(注文伝票データ、商品のマスターデータなど)が基幹システム内などに複雑に管理されており、データの収集・統合が困難
・データ収集がそもそも大変
・大事なデータをローカルで持っており、担当者独自に編集されているためシステム連携に適さない
などが代表的な例です。
また既存システムをスクラッチで作ってるために、外部サービスと連携不可な場合もあります。システム利用の第一歩は利用に必要なデータの準備ですが、集めるまでに時間がかかったりどうしてもデータ化が困難という場合はよくあります。
データ化は避けては通れないシステム化の入り口です。弊社ではできる限り細やかにデータ内容をお伺いし、過去の手法で解決できる部分なのか新規開発にてデータ化が必要かなどを確認しています。お客様の協力なくしては進めることは難しい部分です。
②属人化業務のロジック化が困難
現場の方々とシステム化の相談を進める際に発生する問題です。
属人化された業務が多岐に渡り、かつ複雑で、現状の運用ルールに従ったシステム運用が困難になるケースです。システム化のためには統一されたデータ形式・ビジネスロジックが必要となりますが、統一化が困難なほどに複雑化した業務オペレーションの存在や、特定の担当者に依存し複雑化しておりロジック化が困難などが要因です。
業務オペレーションの複雑さを生む例の1つとして、支店ごとに郊外・都市部・住宅街でのオペレーションが異なる場合があります。郊外であれば1軒1軒の距離があり移動時間が長くなりますが、都市部であれば配送先が集中し駐車場所も十分にないため、特定の場所に車両を停めて各配送先へ直接配送する、というように地域に合わせた配送方法を行っていることが多いです。
支店ごとに属人的に作られた業務オペレーションは、どこまで標準化するべきかを考えるのは非常に難しいです。支店ごとの「これが常識」と考えていた業務が他支店とすり合わせた時に初めて常識ではないと気づいて驚く、ということがあります。各支店が独自で持っている情報はシステム化の要否を検討した上で統一されたフォーマットで取り扱う必要があります。
③人の頭でしか理解できない業務情報がある
導入にむけて現場の業務を確認し、オペレーションのシステム化を検討する際に出てくる課題です。
①で紹介したデータ準備の困難に加え、そもそもデータがない時があります。
例えば人の目で見なければ判断できない商品特性があるなど、人の頭で判断しておりデータ化されていない情報です。
具体例として、伝票に記載されたメモ欄から文脈を読み取り、データ上は記載されていない特殊なオペレーションがあると判断し、ドライバーがよしなにやっているという事例がありました。伝票に書かれている情報だけでは読み取れない情報が隠されているのです。
Loogiaではこのような独自のデータ化されていない情報も丁寧にヒアリングしシステムに落とし込んでいますが、データの基準をすり抜けてしまい最終的には人の判断を必要としてしまうこともあります。
各伝票に記載されている商品種別はお客様の基幹システム上で一定のルールに従って設定されていますが、商流によっては商品種別が適切に設定されずに本来とは異なる商品種別(重量、容積など)でデータ連携されることもあります。この場合、自動での修正は困難で不備のあるデータとして連携されてしまいます。そのため手動で商品種別を訂正する必要性が出てきます。
どこまでいっても人の頭で最終的に判断しなければいけない業務はあるようです。
③でご紹介した属人的業務も人の頭でしか理解できない業務も、全てをシステム化することは困難と思われます。そのため弊社としては、人手を加える余地は残したシステム設計を行うことを心がけています。
④マネージャー層にとって評価指標が定めにくい場合がある
各拠点が別々のやり方をしているために、生産性の底上げの施策が取りにくいという場合があります。支店ごとの当たり前が異なるために、全体の生産性を上げる施策が取り辛くなるのです。
例えば遠方配送を前提としている支店と近郊配送を前提としている場合とでは業務オペレーションが異なるため、本部の定めた評価指標を全ての拠点に当てはめることができず、現場に適用されないというケースがあります。普段から現場が行っている取り組みもあるため、現場は現場でやれることはやり切った状態になってしまい、本部の意向が聞き入れられにくいという場合もあります。
地理的条件1つとっても現場で属人化した業務が存在し、マネージャー層が主導し全体で共通的なオペレーションや評価指標を定めることは非常に大変だと言えるでしょう。
しかし現場の属人的業務を従来のままにしていては、効率化へ前向きに向かうための心理的なハードルが発生してしまいます。この心理的なハードルをそのままにしていては、全社で効率化やシステム導入を進めることは困難です。
マネージャー層と現場の溝はシステムでは埋められません。しかしシステム化を進める取り組みの中で密に会話をし、順に認識を揃えることで解決へ進むことは可能です。弊社もLoogiaを利用いただく、できるだけ全ての方が効果を感じてもらえるよう、手厚くサポートさせていただきたいと考えています。
弊社が開発した解決ソリューション
ここまででご紹介してきた課題を解決するために、「Loogiaコネクト」というサービスを開発・提供しています。
日々発生する配送業務に関するデータ(伝票、ドライバーの勤怠など)やマスターデータ(商品マスターなど)をデータ統合でき、マニュアルでの統一されたオペレーションの構築支援も実施しています。また作成した配送計画を外部システムに連携する仕組みも提供しています。
これまでぶつかってきた壁を乗り越えることが、物流DXを実現する上で必須と考え開発をはじめました。そして何よりお客様にLoogiaの価値を最大限活用していただきたいという思いから、開発を進めるようになりました。
できるだけお客様に寄り添ったカスタマイズを行うことで、システムだけでは手の届かない部分もうまく対処できる状態を目指して開発しています。
オンプレに近い形でご要望を汲み取れるLoogiaコネクトだからこそできることを、ご紹介します。
Loogiaコネクトの4つの特徴
Loogiaコネクトの概要は上図の通りです。
現場の課題を解決するソリューションのLoogiaコネクトには、4つの特徴があります。
①自社データが取り込めるようにカスタマイズできる
基幹システム上のデータをAPI、ファイル連携(例:SFTP、S3など)やデータベース連携(MySQL、Oracleなど)を用いて取り込むことができます。
ローカルファイル(CSVなど)の取り込みも可能です。ファイル内にどんな列があり、それぞれの用途やデータを定義するカラム定義をはじめとしたフォーマットは、個社ごとにカスタマイズすることができるので、お客様のデータに合わせることが可能です。
②現場の声を実際に聞いて開発に反映
専門のオペレーションコンサルタントやエンジニアが、現場ヒアリングの上で現場業務の暗黙知を形式知へと変換しデータ形成を支援します。定期的な打ち合わせや現場訪問を行い、現場の方の声を反映させた開発を心がけながら、お客様独自の複雑な業務要件を加味したデータ処理方法の構築を行っています。
③データ編集画面からアナログな編集も可能
業務オペレーションに寄り添ったデータ編集画面を提供しています。
これによりデータ化できない情報や配車担当者が持つ暗黙知を、取り入れることができるようになっています。
例えば上図のように、編集し直したい設定を選択し、手動で変更することも容易にできます。自動で取り込んだ情報を最終的には人の目でチェックをし、自動配車を行います。どうしてもシステムでは対応しきれない部分は、デジタルとアナログのハイブリットで対応できるようになっています。
④配送計画を他システムへ連携可能
Loogiaの算出した配送計画を他システムへ自動連携することもできます。
例えば作成した配送ルートとお客様のデータを統合した上で、独自の帳票を作成することも可能です。作成された伝票単位のデータは庫内作業書として利用したり、基幹システムへの連携データへ変換することもできます。つまり、Loogiaの配送計画を、再度お客様が利用するシステムの形式へ戻すこともできるようになっています。
おわりに
いかがでしたでしょうか。システム導入時の課題は、今回紹介した他にも千差万別の課題があることでしょう。しかし物流DXのために、そして将来の継続的な事業成長のためにもシステム化を検討していただきたいと考えています。弊社は自動配車システムの提供を通して、より多くのお客様の業務効率化を支援し、心にゆとりがある物流を実現したいと考えています。
Loogiaコネクトについては別途開発費などがかかりますが、Loogiaはお客様の課題解決のために寄り添い、提案できるパートナーとして貢献いたします。お問合せお待ちしております。
また今回はLoogiaコネクトの概要を紹介しましたが、今後複数回に渡ってより具体的な事例やソリューションの詳しい説明記事を公開予定です。そちらもぜひご覧ください。