現在、物流業界では人手不足やベテラン依存などの課題が深刻化しています。それらの課題を解決する鍵になるのが「配送ルートの最適化」です。配送ルートは1つの車両が配送する順序や、それぞれの配送先までの道順を考えるだけではなく、複数車両の配送計画も含まれます。
この配送計画を効率化・最適化することが重要ですが、配送ルートの最適化は非常に難しいと言われています。この記事では配送ルート最適化の問題が難しい理由や、それを実現するためのアプリ・サービスについて紹介します。
配送ルート最適化とは?
配送ルート最適化とは、複数の車両がそれぞれ複数の配送先を訪問する際に「どの車両が、どの訪問先を、どの順で」回ると効率が良いかを計算して最適なルートを作成することです。
配送ルートの最適化は非常に難しい問題
実際の配送現場において、最適なルートを導き出すことは非常に難しい問題です。その理由は、配送ルートの膨大な組合せと配送現場ならではの制約条件の2つあります。
1.配送ルートの膨大な組合せ
配送ルートの最適化が難しいと言われる理由の1つ目は、配送ルートの膨大な組合せです。実際の配送現場では、配車マンが経験と勘を頼りに、複数のトラックと配送先から、どのトラックがどの配送先をどの順番で、そして、どのルートで配送するのかという計画を作成しています。これは長年の経験を必要とする非常に難しい業務です。
なぜ難しいのか、組み合わせの多さという点から考えてみます。
45件の配送先をトラック3台で15件ずつ割り当てる場合、その組み合わせは7兆8,460億以上となります。配車計画を作成するということは、この膨大な組み合わせの中から1つの最も適切な組合せを導き出すということなのです。
そして、最も適切な組み合わせを導き出すために、すべての組み合わせを調べようとスーパーコンピューターを使ったとしても膨大な時間が必要となり容易ではありません。この問題を解くためには特殊なアルゴリズムが用いられています。
2.配送現場ならではの様々な制約条件
2つ目に、配送計画は配送現場ならではの様々な制約を満たしている必要があります。例えば、配送先に時間指定がある場合は、特定の時間枠のなかで訪問する必要が出てきます。
それ以外にも、以下の制約条件が存在します。
配送先 に関する条件 |
荷物 に関する条件 |
ドライバー に関する条件 |
車両 に関する条件 |
道路 に関する条件 |
住所 |
荷量 |
勤務時間・ 休憩時間 |
車両タイプ |
交通規制 (一方通行や大型車通行など) |
時間指定・ 作業時間 |
荷姿 |
保有免許・ スキル |
積載容量 |
混雑状況 (曜日・時間帯別) |
ドライバー・ 車両の指定 |
保管方法 (冷却・冷蔵) |
担当エリア 出発地・帰着地 |
走行距離・燃料 |
Uターンや 右折の回避 |
停車位置 |
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配送件数 |
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高速道路の 利用有無 |
配送ルート最適を行う仕組み
最適な配送ルートは、配送現場の制約条件と道路情報・走行データを蓄積したでデータベースから、特殊なアルゴリズムによって導き出されます。
ルート最適化アルゴリズム
上述の通り、膨大な数の組み合わせより、配送ルートは配送現場ならではの様々な制約条件を考慮した、1つの最適なルートを導き出さなければいけません。この非常に難解な問題は「配送計画問題」と呼ばれており、この問題を解くための手法は世界中の研究機関で研究対象とされている分野です。
そして、膨大な数の組み合わせから最適なルートを導くのが「組合せ最適化」技術を活用したアルゴリズムです。このアルゴリズムは「どの車両がどの訪問先をどの順で、どういうルートで回ると最適か」を導き出します。まさしく、物流現場における配送ルート最適化のための技術が活用されているのです。
このアルゴリズムはルート最適化アプリ・サービスを提供している各社で開発されています。そのため、考慮可能な制約条件や最適なルートを導き出すために要する時間などが異なります。
最適なルートを導き出すビックデータ
最適なルートを導き出すためには、日本全国各地の道路情報や、走行距離・時間を導き出すための走行データが必要です。これらのデータには、渋滞や交通規制などの交通情報を保有するVICS情報や、テレマティクスより収集した走行データなどがあります。
これらの道路情報・走行データを蓄積したビックデータと、配送現場の制約条件とあわせて、適切なルートを導きます。データベースに蓄積される道路情報・走行データもまた、アプリ・サービス提供各社で異なるため、同じトラック台数・配送件数でも異なるルートを導くことがあります。
そして、アルゴリズムによって導き出された配送ルートが、結果的に配送先や車両、ドライバーなどの制約条件を満たさない場合も出てきます。その際には、導き出された配送ルートを手動で修正できる機能もサービス・システムによって存在します。
配送ルート最適化アプリ・サービスのメリット
配送ルート最適化アプリ・サービスの導入メリットを3つ紹介します。
配送計画作成の工数・時間削減
配送ルート最適化アプリ・サービスの導入によって、配送計画作成の工数・時間削減、効率化を図ることができます。
家具・事務機材の配送を行う関西陸運株式会社は、配送ルート最適化システムの導入により、複数の取引先からの発注データを一括管理し、配送計画の作成時間を120分から30分への削減に成功しています。
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また、LPガス事業者は、スマートメーターの残量情報を元に容器の配送計画を自動作成できるようにしました。以前は持ち運び型カーナビに配送先住所を手入力して計画を立てていたところ、配送ルート最適化アプリの導入後は、30~60分かかっていた作成時間が3分以内に完了するようなりました。
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配送コストの削減
配送ルートの最適化によって、車両台数や走行距離の削減につながっています。
生活協同組合の東海コープでは、DXプロジェクトの一環で、個人宅向けの食料品配達のコース最適化のために、2021年5月に配送ルート最適化システムを活用した実証実験を行いました。その結果、配達コース数3コース(車両台数3台)、配達時間15.0%、走行距離9.7%の削減を実現し、職員の負担軽減とサービス品質向上に向けて、導入拡大を進めています。
関連記事:導入事例:東海コープ事業連合様 - Loogia 自動配車クラウド
このように走行距離が短縮されることで、燃料代の削除だけはなく、配送時間削減によってドライバーの働き方改革にも期待できます。さらに、走行距離の削減はCO2排出量の削減にも直結し、SDGs・環境配慮の観点からの改善効果も期待できます。
関連記事:敷島製パンで走行ルート学習型配車サービス「Loogia」活用による商品配送におけるCO2削減に向けた本格運用を開始 〜持続可能な社会を目指して〜
配送業務の属人化脱却・新人の即戦力化
配送計画の作成は難易度が高く、豊富な経験とスキルを有するベテランの配車係やドライバーに依存しがちです。配送ルート最適化アプリ・サービスを活用すれば、新人の配車係やドライバーでも最適な配送計画を作成することができ、配送業務の属人化解消、新人の即戦力化にも有効です。
日本郵便のゆうパック配送において、ドライバーの経験や土地勘によらず誰もが活躍できるように、ルート最適化アプリによる実証実験を実施しました。新人ドライバーとベテランドライバーの配達業務(ルート作成時間+配達時間)の差が平均67分だったところ、アプリの導入により平均17分まで短縮されました。
関連記事:日本郵便株式会社様「新人とベテランの配送業務の差を短縮」
また、佐川急便の集配業務における実証実験においても、アプリ導入の結果、新人・応援ドライバーのルート組みで30分、配送業務時間で60分とそれぞれ削減効果が検証されました。さらに、新人ドライバーや応援ドライバーには特に有効で、職務経験が浅くても即戦力化が期待できるという声も上がっています。
関連記事:ルート最適化システム「Loogia」を佐川急便で導入を開始
配送ルート最適化アプリ・サービスの比較ポイント
企業によって配送業務は異なるため、自社に適した配送ルート最適化アプリ・サービスを選ばなければなりません。ここでは、アプリ・サービスを検討する上での比較ポイントを紹介します。
適合性:自社の配送条件・導入基準を満たすか
配送ルートの最適化を図っていくためには、自社が求める精度の高い配送計画の作成が可能か見ることがポイントです。自社の求める基準によって、アプリ・サービスに求める条件・機能は変わってきます。
アプリ・サービスの比較選定時には、下記のようなポイントを事前に整理して優先順位をつけておきましょう。
- 配送計画を作成する上で考慮しなければならない条件はなにか
- 配送ルート最適化によって、自社の課題を解決するために必要な基準はなにか
- 現場で使えるアプリ・サービスのために必要な機能はなにか など
可走性:計画通りに配送できるか
実際に現場で配送するドライバーにとって『使える』計画であることが重要です。配送先への遅延がなく、また、ドライバーにとっても無理のない配送計画であることが求められます。
これらは配送ルート・配送時間に大きく影響するため、下記のようなポイントで配送ルートが作成されているか確認すると良いでしょう。
- 通行禁止などの道路情報が配送ルートに反映されているか
- 曜日や時間帯によって変化する道路の混雑状況が反映されているか
- 交差点の右折やUターン運転を回避するといった安全が配慮されたルートか
サポート体制:自社に合った導入支援か
既存の業務フローを変えずに、ルート最適化アプリ・サービスをそのまま導入できるケースは少ないため、サポート内容もしっかり確認しておくことが重要です。特に、現場へ導入する際は従来の運用と変わるため、現場から反発が起こるケースもあります。
スムーズな導入を行うためには、各社のアプリ・サービスに導入や運用サポートがあるかをよく確認しておきます。以下のポイントを実現するためのサポートがあるか確認していくと良いでしょう。
- アプリ・サービスの導入により、現場運用で期待する効果が得られるのか
- 実際に使う配車担当者やドライバーがスムーズに操作できるか
- 現場のドライバーへの理解を得て、実際の業務にアプリ・サービスを落とし込めるか
関連記事:配車管理システムの選び方、比較方法を解説!業務効率化を実現するポイント9選
配送ルート最適化を実現するアプリ・サービス
配送ルート最適化を実現できるアプリ・サービスシステムとして、自動配車システムや、TMS(輸配送管理システム)を使うことが多くなっています。
配送ルート最適化サービス『Loogia(ルージア)』
『Loogia』は、アルゴリズムを活用して最適なルートを導く、自動配車システムです。あいおいニッセイ同和損保が保有するテレマティクス自動車保険のデータを活用し、安全で最適なルートを導き出しています。また、配送現場ならではの制約条件を40以上考慮することができ、”現場で使える”配送ルートの最適化を実現します。
関連記事:自動運転社会を見据えた「安全で最適な走行ルート」の実現に向けた共創取組を開始
リアルタイムの配送管理に活用した動態管理機能もあります。ドライバーがどこにいるのか、どこまで作業が完了しているかといった進捗管理ができるようになり、配送先の急な依頼や変更に対しドライバーへ迅速な指示が可能となります。
そして、リアルタイムの配送管理が可能になることで、管理者の管理業務の効率化を図ることができます。
まとめ
この記事では、配送ルート最適化が難しい理由と、それを実現するアプリ・サービスについてご紹介しました。膨大なパターンがある配送ルートの候補の中から、実際の配送現場での制約条件を加味した最適な配送ルートを選択することは非常に困難です。
現在、それを解決するアプリやサービスは従来に比べて進化しており、導入障壁も低くなってきています。
その中で私たちは、深刻化する配送現場の課題を解決するために、独自に研究開発したアルゴリズムを利用し「現場で使える」システムを提供します。弊社オプティマインドが提供する『Loogia』に興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。